2014年11月14日
フレッチャー氏は、自ら実験台になり、よく噛むことで健康を取り戻すだけでなく体力もつくことを証明した。
また同時に、それまでの栄養学の常識まで覆した。
なんと氏の栄養摂取量のあまりにも少なかったのである。
当時はドイツの生理学者 フォイトによる栄養摂取量が一般的に利用され、成人では1日当たりタンパク質118g、総カロリー数は約3000kcalであった。
しかし、氏はタンパク質45g、総カロリーは1600kcalとその半分しか食べていなかった。
この点で多くの学者は、フレッチャーイズムに疑問をいだいていた。
(図1)
そこで多くの検証実験が行われた。
ここでその一つを紹介する。
アメリカ エール大学のアーヴィング・フィッシャー教授は、まず48名の青年を2組分けた。
そしてA組(15名)は、食事に肉食・卵を与え、B組(33名)には、肉や卵を制限すると同時に、フレッチャーイズムの食事をさせた。
そして以下の実験を行った。
実験1:「どれだけ両腕を水平に伸ばしておけるか」
実験2:「膝を十分に曲げたり伸ばしたりする運動」
その結果、
実験1では、Aクラスは平均10分、Bクラスでは49分。
実験2では、Aクラスは平均383回、Bクラスでは833回。
これらの実験により、摂取量が少なくとも、良く噛めば健康を保つだけではなく、持久力も付くことが証明された。
こうしカミカミ健康法は、全世界で市民権を得ていった。
(図3)
これに目を付けたのがアメリカ合衆国第32第大統領のルーズベルトであった。
これは、有事の際に有効だと考え、陸軍の兵士に実践させた。
また、わが国でも昭和15年に発行された「戦争に勝つ食物」(桜沢如一著)にも紹介されている。
(図4)
ここで話は変わる・・・。
“健康長寿のスーパー伝道師”である昇地三郎先生は、ここでも数回紹介した。
先生が107歳でも健康なのは、「一口30回」の食事にあった。
3歳の頃に大病を患い、母親から“一口30回噛む”ように言われ、100年以上も実践されてきたのだ。
でもどうして、“100年前の情報の乏しい時代に、母親が知っていたのだろう?”と不思議に思ってきた。
最近、その謎がやっと解けた。
フレッチャー氏は、1909年に日本で講演活動を行った記録がある。
昇地先生は、1906年(明治39年)生まれ。
まさに時期がぴったり一致するのだ。
きっと母親は、フレッチャー氏の講演会を聞いたか、新聞で読んだのであろう。
それを幼い先生に伝えた。
フレッチャーイズムは、時空を超えて昇地三郎先生(注2)に受け継がれていたのだ。
追記:
昇地三郎先生は昨年11月に亡くなられた。
先生は、75歳で総義歯となったが、大好物のステーキを食べて来られた。
「私の長寿は、この義歯のおかげ」と常におっしゃっていた。
その義歯は、調整なしで30年間も使い続けられてきたという。
そんな大切なものであるから、旅立ちの時に一緒に持って逝かれたと思っていた。
ところが、あまりにも素晴らしいので、先生の秘書から作製された技工士に返されていた。
(図6)
現在、その義歯は大分県の日田市の技工所に置かれている。
興味ある方は、以下に連絡すれば見せていただけるようにお願いした。
〒877-0056 大分県日田市誠和町275-5 西日本歯科補綴研究所
原田庸人先生 0973(23)3200
E-mail:ns-dent@water.ocn.ne.jp
注1:フレッチャーイズム参考文献:
・フレッチャーさんの『噛む健康法』 市来英雄著 医歯薬出版
・戦争に勝つ食べ物 桜沢如一 大日本法令出版
・絵本 ゆっくりゆったりよくかんで フレッチャーさんの大発見 市来英雄著 医歯薬出版
・Horace Fletcher :Fletcherism : how I became young at sixty,1913.
注2:昇地三郎先生の「昇」という漢字は、
正式には「日(ひへん)」に「舛」となります。
前 岡山大学病院 小児歯科 講師
モンゴル健康科学大学(旧:モンゴル医科大学) 客員教授
歯のふしぎ博物館 館長(Web博物館)
岡崎 好秀
⇒ http://leo.or.jp/Dr.okazaki/