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動物園の動物達も高齢化【4】クチバシの破折

2018年11月30日

先日、野生動物学会に参加した。
この学会は動物園の動物に関する研究が多い。
動物の歯や口に関する取り組みを探すためである。
そこには、タンチョウのクチバシの外傷と固定法についての発表があった。
なわばり争いの喧嘩や檻でクチバシを折ることが多いらしい。
(図1)

鳥は大空を飛ぶため、進化の過程で体を軽くする必要があった。
そこで重い歯を退化させる。
さらには、骨の内部を空洞化させ”含気骨”を作り出した。
上のクチバシは切歯骨、下は下顎骨からなる。
骨の周囲は角質層で覆われ、その間には血管や神経がある。
このような構造から鳥の頭骨は、驚くほど軽い。
オオハシ(大嘴)の頭骨は、小型のサルの半分に満たないのだ。
(図2)

以前、フラミンゴの頭骨を拝借しCT撮影をしたことがある。
クチバシは、頭骨より多孔性であった。
(図3)

このような構造から、鳥はクチバシを破折するリスクが高い。
破折部位は、上のクチバシが多い。
外鼻孔が開くため、骨の細い部分が存在するためだ。
先端部のわずかな破折や亀裂の場合、角質層が伸び自然治癒が期待できる。

参考:のびるんです,クチバシが!東京ズーネット2011-10-21

http://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&link_num=20458

しかし大きく破折するとどうだろう?
クチバシないと、エサは取れないばかりでなく飲み込めない。
これは鳥にとって生命に関わる大問題だ。
動物園では、飼育員がエサを喉の奥に入れて与えるという。
そこで軽量プラスチックやチタンでクチバシを作製する。
(図4)

しかし、その固定がまた難しい。
ワイヤーを利用し外鼻孔に維持を求めるが、骨に負担が大きく脱落しやすい。
そこで最近、外側からエポキシパテやプレートをピンなどで固定し自然治癒に導くらしい。
(図5)

ついつい歯科の最先端材料を応用できないかと思ってしまう。

それでは、他の動物の歯の外傷はどうだろう?

続く

前 岡山大学病院 小児歯科 講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
岡崎 好秀
http://leo.or.jp/Dr.okazaki/