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動物園の動物達も高齢化【11】げっ歯類の過長歯

2019年03月15日

げっ歯類のカピバラの下顎前歯をそろっと指で引っ張ってみた。

(図1)

すると驚くべきことが起こった!
なんと歯を引っ張っても・引っ張っても歯根が出て来るではないか。

そこで同じげっ歯類のヌートリアの頭蓋骨のCT撮影を行った。


(図2)

下顎前歯の歯根は長く、遥か臼歯部の下まで達していた。
しかも根尖は開いたままだ。

(図3)

ヒトの萌出途上の根未完成歯と同じ状態である。
げっ歯類では、この部分の代謝が旺盛なため歯根が形成され続ける。
あらためて歯は、血液から作り出されることを認識せずにはおれない。

続けて、臼歯部に目を移す。
げっ歯類は、顎を前後に動かせて硬い種をかじる
そのため咬合面は、洗濯板のように頬舌方向に溝が走っている。


(図4)

次に、関節頭を眺めると前後径が長い。
このおかげで下顎が前後に動いても、関節の脱臼を起こさない。
げっ歯類の歯と顎骨は、硬い種の殻を割るために進化したことがわかる。

さて、摩耗に対応するため、歯が伸び続けると便利そうに見える。
しかし、ここには大きな弱点がある。
それは、 “歯が伸びる速度”と”摩耗する速度”が一致しなければならないことだ。
では”栄養豊富なペレット”や”軟らかいエサ”ばかりを食べていればどうなるだろう?
そう! 歯が摩耗しないので、口を閉じることができない。
これを”過長歯(かちょうし)”と呼ぶ。
ちなみに左は正常なウサギの頭蓋骨。
右が過長歯だ。


(図5)

この歯は、対合歯の歯肉を傷つける。
当然、食べることができず死んでしまう。
そこで獣医師は、伸びた切歯をカットする。
これは、ビーバーの過長歯の例。
歯科用の器械で切歯を削っている。


(図6)

さまざまな動物は、食物に合わせて歯や顎骨の形態を変化させてきた。
しかし、その使い方を誤ると、不正咬合で命が脅かされるのだ。

前 岡山大学病院 小児歯科 講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
岡崎 好秀
http://leo.or.jp/Dr.okazaki/