2018年11月02日
福岡県の大牟田動物園では、”ハズバンダリートレーニング”の一環として動物の開口訓練を行っている。
ご褒美のリンゴを与え、飼育員が人差指と親指を広げるサインを出すと
ツキノワグマが大きく口を開けた。
(図1)
もちろん口腔内の診査のためである。
残念ながら、歯周病が進み臼歯の多くが脱落していた。
以前、ある獣医師から聞いた言葉。
「動物園では、10年前までは考えもしなかった病気が増えています。
その多くは口腔疾患です。動物の飼育環境やエサが良くなり、高齢化が進んでいるためです。」
某自然史博物館で動物の頭蓋骨を見せていただいたことがある。
いずれも動物園で飼育されていたものらしい。
歯石が多量に付着し、歯周疾患が進んでいる。
この状態を見ると歯科医師としても心が痛む。
(図2)
動物の生活の向上(QOL)のためにも、歯科医師の立場から役に立つことがあると思う。
さて、動物の歯科疾患の多くは,歯周疾患や歯の外傷だという。
むし歯も気になるが、サルの仲間に多いそうだ。
これはヒトと同様、臼歯部の形態的な要素が大きい。
しかし某動物園の学芸員の話では、以前と比べサルのむし歯は減少しているらしい。
不思議に思い、その理由を聞いたら、思わず吹き出してしまった。
「お客さんのマナーが良くなった」とのこと。
かつては、「お客さんがお菓子を与えるので、むし歯ができて困る」との話を聞いた。
(図3)
“自分だけは・私だけは良いだろう・・”と思って与えていたのである。
どうやらこれは昔の話になりつつある。
“子どものむし歯”と”サルのむし歯”には正の相関関係がありそうだ・・。
続く
前 岡山大学病院 小児歯科 講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
岡崎 好秀
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