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動物園の動物達も高齢化【10】ドングリと歯

2019年03月01日

種は栄養豊富なので多くの動物も食べる。

動物が食べる種といえば、ドングリを思い浮かべる。
これを食べる動物は、サル、シカ、タヌキ、それにイノシシやブタなどがいる。
そう言えば、ドングリが少ない年は、クマが人里に降りて来るので目撃情報が増える。
(図1)

これらの動物は雑食である。
硬いドングリを食べるには、相応の臼歯が必要だ。
これらのうち、手元にある臼歯の写真を探してみた。
なるほど! それなりに立派な雑食動物の臼歯をしている。
(図2)

これで硬い殻を咬み割って食べる。
しかしこれらの動物は、それなりに大きな体をしている。
では、小さい動物はどうなのか・・?

実は、硬い殻を割る動物が他にもいる。
ネズミやリスに代表される”げっ歯類”。
これらは、基本的には種子食である。
この仲間は、切歯を発達させた。
歯式は、前歯1/1・犬歯0/0・前臼歯(小臼歯)1/1・後臼歯(大臼歯)3/3。
これが左右にあるから合計20本の歯を持つ。(注:上顎/下顎)(図3)

これは大型のげっ歯類のヌートリアの頭蓋骨。
前歯部には、大きな一対の切歯がある。
(図4)

唇側に着色があるのは、鉄が含まれているためである。
面白いことに切歯の唇側にエナメル質があるが、舌側は象牙質だけなのだ。
どうしてだろう?
エナメル質と象牙質は硬さが異なる。
そのため軟らかい象牙質が先に咬耗する。
結果として、硬いエナメル質が残り、先が尖ってノミ状になる。
(図5)

だから硬い殻を割ったり、樹木を齧(かじ)ることができるのだ。

もちろんエナメル質も徐々に咬耗するので歯冠長は短くなる。
しかしその分、歯が伸びるので、常に長さは一定だ。
そのスピードは年間約10cmに達するという。

ここに同じげっ歯類のカピバラの頭蓋骨がある。
(図6)

そこで、下顎前歯をそろっと指で引っ張ってみた。
すると驚くべきことが起こった。                     続く

 前 岡山大学病院 小児歯科 講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
岡崎 好秀
http://leo.or.jp/Dr.okazaki/