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何故、旭山動物園の動物たちは元気なのか? その3/“環境エンリッチメント”

2012年05月24日

動物園の動物達は、閉園後何をしているのだろう?
エサを食べたらすぐ眠るのか? それとも、消灯までの時間を楽しむのか?
(図1)

さて動物は、種類により睡眠時間が大きく異なる。
一般的に肉食動物は長く、草食では短い。
草食動物の睡眠時間は2~3時間だと言う。 理由は2つある。

まず天敵に襲われれば、命にかかわる。
そのため熟睡することができない。
また、エネルギー効率の低い草を食べるためには、よく噛まなければ体を維持できない。
そのために、眠る暇などないのだ。
(図2)

動物園の草食動物は、眠れずに退屈な夜を過ごしていることがわかる。

そこで旭山動物園で行なわれていること。これが面白い。

ゾウ舎の裏側では、ゾウが鼻を伸ばし、やっと届くか届かないところにエサ入れがある。
こうすることで、一晩中エサを食べ続けるのだ。
(図3)

無為に過ごす時間を減らすことが、動物にとっての幸せだという。
この様な取り組みを「環境エンリッチメント」と言う。

ところで、サルに1日の食物を一度に与えると、どの位の時間で食べ終えるだろう?

この答え。 たった5分なのだ。

それでは1日の残り23時間55分。
もしあなただったら、何をして過ごすだろう?

もちろん、檻の中であるから、新聞がなければテレビやインターネットもない。
だらだらと退屈な時間を過ごすしかない。
そのような生活が、動物にとって幸せなのか?

事実、サルはストレスがたまり、自身の毛をむしって食べるという異常行動も出現する。

さて、野生のサルは1日の大半を採食行動に費やすという。
自然界で食物を手にするのは、それだけ困難なことなのだ。

そこで“エサを探す時間を長くする取り組み”が必要となる。

木屑の下にエサをばら撒く。
あるいは、木箱に小さな穴を開け中にエサを入れる。
転がすと、種が1粒ずつ出てくる仕組みだ。
そうすると、サルは夢中になりエサを探し続ける。
(図4)

だから観客の目からは、旭山動物園の動物は元気に見える。
小菅正夫先生の言葉。

「エサにありついた時、サルはなんとも嬉しそうな顔をするのですよ。」

なるほど!これが「環境エンリッチメント」なのか・・・。

ところでこの話。
我々にも通じまいか。
物に満ち溢れていても、目的のない生活は幸福とはいえない。
我々にとっての大きな喜びは、患者さんの笑顔を見ることである。
歯科医療従事者にとっての“やりがい”とは、サルの採食行動に通ずるものなのだ。

 *平成24年5月12日 日本小児歯科学会第50回記念大会において、小菅正夫先生の公開講演会が開催 予定です。 
演題は「動物は歯が命」 
(時間:13~14時 場所:東京国際フォーラム ホールC) 
詳しくは学会HPをご覧ください。
 ⇒ http://www2.convention.co.jp/50jspd/greeting/index.html    【ご案内】

現在、元旭山動物園 名誉園長小菅正夫先生とご一緒するボルネオツアー 企画中!

 (図5)

 詳しくは以下からどうぞ・・・。

 ⇒ http://tabiza.com/nature/detail/110/

 ⇒ http://leo.or.jp/Dr.okazaki/cgi-bin/boruneo4.pdf

>>岡崎先生のホームペ-ジ http://leo.or.jp/Dr.okazaki/