2012年06月01日
旭山動物園の名物にオランウータンの空中散歩がある。
高さ17メートルのポールに、長さ13メートルの2本のロープが張られている。
(図1)
オランウータンがこれを渡るのだ。
まるでサーカスの綱渡りの様だ。
こんなに高いところ、ヒトは普通は怖くて渡れない。
この建設計画が公表された際、転落防止用ネットの是非まで論議されたという。
しかしネットなど自然界では存在しない。
そもそもオランウータンは樹上生活者。
高い所には慣れているから恐怖感などない。
寝る時も木の上、エサも枝にぶら下がりながら食べる。
握力はなんと400キロ、ヒトの10倍もある。
落下したら命に関わるため、決して枝から手を離さない。
そもそも、落ちるわけなどないのだ。
唯一、落ちてくるのはウンチやおしっこ。
これには気をつけなければなるまい。
さてオランウータンに、どのようにして空中散歩をさせるのか?
実は、反対側にエサが置かれている。
それを目指して渡るのだ。
しかも、それがたったのピーナツ3個だと言う。
ピーナツ3個のために命を賭ける。自然界でエサを得ることは、それだけ厳しいことなのである。
さて空中散歩の前には、飼育係がオランウータンについて説明する。
(図2)
そして渡り始めるや否や、歓声が園内に満ち溢れる。この間、観客は20分以上釘づけだ。
現在、この成功を受け、数ヶ所の動物園に類似施設が作られている。
そこで、ある動物園へ見に行った。
空中散歩が始まるので、遠足に訪れた子ども達が待ち構えていた。
ところが・・・である。
ここでは飼育係が無言でエサを置くと、オランウータンは瞬く間に渡ってしまった。
そして、エサを取り建物に入った。
この間、わずか2分たらず。
子ども達は、あまりの短さに呆然とするばかりだった。
どうして空中散歩に、これだけの差が生まれたのか?そこで元旭山動物園 園長小菅正夫先生に、ゆっくり渡らせる工夫についてお聞きした。
答えは、「特別に何もしていない」とのことであった。
するとロープの張り方が違うではないか。
ある動物園では、ロープの間隔が均等に張られている。
これなら手足を使って、伝い歩きをしやすそうだ。結果として早く渡ることができる。
しかし、旭山動物園では、上部のロープを弛ませている。
そうすると、ぶら下がりながら交互に手を出さないと進めない。
なるほど!こんな小さな差が、観客を魅了させるのだそもそも自然界では、2本の枝が均等に並んでいることなどありえない。
ロープの張り方一つにまで、動物の素晴らしさを引き出す工夫がなされている。
他の動物園が見習うべきところは、ハード面のみならずソフト面にもあったのだ。
参考:youtube
旭山動物園の空中散歩
⇒ http://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=LDTtVrjrBCY
某動物園の空中散歩
⇒ http://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=Wxm-xtx-2Wk
>>岡崎先生のホームペ-ジ
http://leo.or.jp/Dr.okazaki/