2012年04月16日
これまでの動物園では、“動物が動かないのでつまらない”と言われ続けてきた。
そこで旭山動物園では、動物が“どうしたら生き生きするのか?”、観客に対し“どうしたら興味を持つのか?”を考え追求されてきた。
この点について元園長小菅正夫先生からお聞きしたことを述べる。
さて“行動展示”という言葉がある。これは“動物本来の姿や動きを引き出し、観客に見せること”である。
例えば、このオオカミ。
(図1)
他の動物園では見ることができない野性の眼をしている。
突如出くわしたら間違いなく襲われそうだ。まさに厳しい自然界で生きぬくための眼である。
では、どのようにして鋭い眼をさせることができるのだろう?
実は、オオカミの視線の先には、エゾシカ舎がある。チラチラ見えるエゾシカが、オオカミの本能を刺激するのだ。
(図2)
しかしシカは、柵により守られるためストレスはかからないのだ。なるほど! これが行動展示なのか!園内には、随所にそんな仕掛けが隠されている。
ところでこの動物園では、“飼育係”のことを“飼育展示係”と呼ぶ。
通常、動物園では飼育係は目立たない。観客から見ると、動物の向こうの存在である。
しかし、その動物の素晴らしさを最もよく知っているのが飼育係である。だから直接飼育係の口から説明を聞ける。
また手作りパネルも作る。この方が、看板よりよく見てくれるし、情報の更新も早い。
まさに観客と動物をつなぐ役割なのだ。
(図3)
もう一つ、仕掛けを紹介する。
通常キリンを見る時、観客は下から見上げる。
しかしこの動物園は、名前の通り山の斜面にある。
そこでこれを利用し、キリンを真横からも見せる。
観客の高さにエサ箱があり、それを食べるために寄ってくる。
(図4)
だからキリンと一緒に記念写真を撮ることもできるのだ。
(図5)
ちなみにキリンは偶蹄類。
下顎に前歯はあるが、上顎にはない。
その代わり“まな板”のような歯板(しばん)が存在する。
キリンは、長い舌を伸ばし葉や枝を絡ませて引っ張る。
そして下の前歯を“包丁”、歯板を“まな板”の役割にして食物を引きちぎる。
そして臼歯で咀嚼する。キリンの舌は、ヒトの手の役割をしていることがわかる。
そこで、キリンが舌を伸ばす写真が欲しいと思ってきた。
小学校で、歯や口の役割について伝えるためである。
でも、ここでは簡単に撮影できた。
(図6)
この動物園は、子ども達に教えるための教材の宝庫でもあったのだ。
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>>岡崎先生のホームペ-ジ
http://leo.or.jp/Dr.okazaki/