MAIL MAGAZINE メールマガジン

禁煙教育から防煙教育へ その4/副流煙とニコチン中毒

2012年03月19日

ここに1枚の写真がある。サルがおいしそうにタバコを吸っている。
(図1)

ここで問題。このサルは、どうしてタバコを吸っているのだろう?少し考えていただきたい。

1:気分転換
2:実験でニコチン中毒になった。
3:食後の一服

もちろん正解は、ニコチン中毒である。
しかしここで不思議なことがある。
ヒト以外の動物は、火や煙をたいへん恐れる。
動物たちは、山火事を想定し身の危険を感じるからだ。
太古の昔より、多くの仲間が命を失ってきたことが、脳に刻み込まれているのだろう。
唯一、ヒトのみが火を使うことで、外敵から守られると同時に食物を保存することを覚えた。
我々が、現代文明を築き上げた理由の一つが、火の使用にあるのだ。

それでは、どのようにしてサルにタバコを吸わせるのだろう?
まず小さな部屋に入れ、タバコを吸うと砂糖水が出る装置を作る。
当初は、サルは砂糖が欲しくてタバコを吸う。
これを続けると、砂糖水よりタバコを欲するようになる。(注1)
かくしてニコチン中毒の喫煙サルの誕生だ。

ところで、ニコチンは本人が吸う主流煙より、周囲が吸う副流煙の方が2.8倍多い。
子どもの前でのタバコは、子ども達をニコチン中毒にするようなものであることがわかる。
(図2)

しかし、どうして副流煙に有害物質が多いのだろう?
主流煙は、燃焼温度が高いと同時にフィルターを通過する。
これに対し副流煙は燃焼温度が低いため、有害物質が燃焼されにくい。
例えば、灰皿のタバコの煙は、少量でも目が痛んだり咳き込んだりするのはこれらの刺激のためである。

それではベランダで吸うとどうなるだろう?
換気扇の元で吸うとどうだろう?さてニコチンの体内濃度は、30分で半減する。
しかし代謝生成物であるコチニンは約30時間と長い。
これを利用して尿中のコチニンを測定する。
2.5~3歳児の非喫煙者の子どものコチニンを1とした場合。
扉を閉めてベランダで吸うと約2倍。台所の換気扇の下では3.2倍。
同じ部屋では実に15.2倍となっていた。(注2)

副流煙は、子どもの口にも影響を及ぼしている。
尿中のコチニン量が多い子ども達ほど、齲蝕や歯グキの着色も多いのだ。

注1:http://www.dent.okayama-u.ac.jp/syouni/OKAZAKI/cgi-bin/nicotin.mpg

注2:AnnaKarin Johansson, Goren Hermansson and Johnny Ludvigsson
:How Should Parents Protect Their Children From Environmental
Tobacco-Smoke Exposure in the Home?,Pediatrics 2004;113;e291-e295.

>>岡崎先生のホームペ-ジ
http://leo.or.jp/Dr.okazaki/