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禁煙教育から防煙教育へ その3/軽いタバコのワナ

2012年03月05日

小児歯科診療室での話。
子どもの様子が以前とは違うので、なにげなくその理由を母親に尋ねた。
そうすると「最近、この子の父親が亡くなりまして・・」と答えられた。
咄嗟に返す言葉が見つからず、“余計なことを言ってしまった”と後悔した。
働き盛りの死因の多くは、心筋梗塞などの突然死である。
続けて「あれだけタバコを止めてほしいと言ったのに・・」と言われた。
「これからの生活は、どうなるのだろう・・。」子どもの将来を思うと心が痛む。

ちなみに某区職員での調査。男性の喫煙者率は約35%であった。
しかし、全男性職員の在職死亡者の約85%が喫煙者であったという。
それらの職員にも家庭があったことだろう。
子どもを持つ以上、成人するまでの生活を保障するのが親としての責務である。
でも喫煙者は「タバコは止められないから、軽いタバコにしている」と言われる。
タールやニコチンの少ない軽いタバコが、売れていることは健康志向の表れだろう。

そこで、軽いといわれるタバコのタールとニコチンの量を調べたら、それぞれ1~10mg、0.1~0.8mgであった。
同じ銘柄でも、これらの量に差があるのでその理由を調べた。
オリジナルの商品は、タール10mg・ニコチン0.8mg含まれていたが、名前の後に“ライト”、“スパーライト”、“エクストラライト”、“ワン”と付くに従い含有量が低下する。

(図1)

しかし呼吸器科の医師は、以前は喫煙に関係するのは扁平上皮ガンとされてきたが、最近では腺ガンも増加していると言う。
扁平上皮ガンは気管や気管支表面の肺の入り口、腺ガンは肺胞など深い位置にできる。
軽いタバコは、肺の奥まで吸い込むから肺胞まで傷めるのである。
もちろん深い位置の方が、予後も悪い。このような現状を知るたびに、軽いタバコの正確な知識の普及が必要となる。

それではニコチンやタールは、どのように測定されているのだろう?
これらの測定方法は、国際的に決められている。
測定器にタバコを差し込み火をつけ、1分間に35mLの割合で根元まで吸引し、煙が通過したフィルターに含まれる量を測定する。

(図2)
ところで軽いタバコの特徴は、フィルターにミシン目の穴があることはご存知だろうか?
実は、この穴が“くせもの”なのである。
タバコの煙を吸引するとき、この穴から外部の空気も一緒に吸引される。
従って同じ量のタールやニコチンであっても、空気で薄められた煙が測定されることになる。
そこで、実際にこの穴を比較すると、軽いタバコほど穴が大きく、列の数も多かった。

(図3)

同じ銘柄でもタールやニコチン量が異なるのは、この理由だ。
ところでこの穴を知らずに、指や口唇で塞いで吸うと多くが体内に入ってしまう。
どうやら軽いタバコは、決して軽くなさそうだ。

参考:軽いタバコの嘘 佐藤 功:月刊「地域保健」2001-10

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