MAIL MAGAZINE メールマガジン

禁煙教育から防煙教育へ その2/ニコチンとアルファ波

2012年02月20日

どうしてタバコは一度吸い始めたら止められないのだろう?
今回は、この疑問について考えてみたい。

さて「あなたが次の休日、こんなことができたら最高に幸せ!」と思えることを考えていただきたい。
この寒さだったら・・・。
「日本を脱出して、南の島へ行き1日中海を眺めていたい!」
「露天風呂に入りながら、雪見酒を一杯!」
「日本海の蟹のフルコースを食べる!」などいろいろなことを思い浮かべるだろう。
このような楽しいことを思い浮かべると、脳から快楽物質であるドーパミンが溢れ出る。
実はタバコに含まれるニコチンにも、ドーパミンを強制的に分泌させる作用がある。
ニコチンが体内に入ると、癒しの働きをするアルファ波も7秒後には増加する。
だからタバコを吸うと、落ち着いた感じがするのだ。

しかし、ニコチンが切れるのは早い。体内濃度は約30分で半減する。
それに伴いアルファ波も減少する。
しかもゆっくりなので気がつきにくい。そこで口さみしくなったり、落ち着かなくなる。
なんとなくイライラするかもしれない。
だからタバコに手を出してしまう。
吸うとまたアルファ波が増加し、ホッ!とする。
この過程で脳は、タバコを吸うと落ち着くことを学習するのだ。

ところでアルファ波は、仕事でのストレスや家庭でイライラした時にも減少する。
だからタバコを吸えば、アルファ波が増加したぶん落ち着いた気になる。
しかし、あくまで落ち着いた気になるだけだ。
なぜなら本当のイライラは、その原因が解消されるまで続くはずである。
脳はこの微妙な差を見抜けないため、イライラはタバコで解消できると思ってしまう。
かくしてニコチン依存症の道を歩むこととなる。
ちなみに喫煙者の約7割が依存症で、その4割が無自覚者とされている。

それでは、南の島できれいな空気を吸っているはずなのに、タバコを吸いたくなるのは何故だろう?
おいしい蟹のフルコースを食べたのに、吸いたくなるのは何故だろう?
さて先ほど、ニコチンはドーパミンを強制的に分泌させると述べた。
そのため、もともと持っているドーパミンの分泌が低下し、常時アルファ波が出にくい状態になっている。
だから至福の状態になっても、そこまで至らない。
かくして、またタバコに手が伸びてしまう。

タバコを始めると止めるのが難しいのは、このような理由なのである。
だから子ども達には、タバコの煙から遠ざける防煙教育が必要だ。
しかし、ここで考えていただきたい。
元々、タバコを吸わなければアルファ波が減ることはなかったはずだ。
タバコでストレスが解消されるのではなく、逆に新たなストレスを生み出していたことがわかる。
これさえわかれば、タバコを吸うことが馬鹿馬鹿しくなる。

さて、禁煙を始めることでドーパミンの分泌が回復しだす。
この間、約3日。
かかったとしても1週間で元に戻る。
しかも最近、さまざまな禁煙補助薬が売り出されている。
薬物を利用して、この時期を乗り越えるのも手だ。
ドーパミンが回復すると、もうタバコはおいしくなくなる。
脳の状態は、吸っていなかった頃と同じ状態に戻るためだ。
吸いたい気持ちを湧かさないようにすれば、タバコをやめることは意外と簡単なのだ。

参考:磯村 毅 リセット禁煙のすすめ(東京六法出版社)

>>岡崎先生のホームペ-ジ
http://leo.or.jp/Dr.okazaki/