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お茶はどうして体に良いのか? その2 『タンニンと歯科用セメント』

2006年10月02日

前回は、お茶に含まれるタンニンについて述べました。タンニンは物質名ではないので、ポリフェノールの仲間と言った方が正しいでしょう。さてポリフェノールの“抗酸化作用”は生活習慣病の予防となるため注目されています。
どうしてこのような作用があるのでしょうか?
さて虹は、光の波長の違いから赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の7つ色からなります。そして、赤より波長が長いと赤外線、紫より波長が短いと紫外線(ultra violet rays略してUV)です。さらに紫外線はUV-A・UV-B・UV-Cの3つに分けられ、UV-Aは日常受けている紫外線、UV-Bは海水浴やテニスなど日焼けする紫外線、UV-Cは殺菌灯に使われる紫外線です。この紫外線を受けると、体の水分と反応して活性酸素ができます。“活性”と聞くと“元気の出る物質”のように思われますが、とんでもありません。酸素そのものは、ヒトが生きるうえで重要な物質です。しかし、鉄クギを空中で放置すると酸化され錆び始めますが、ヒトの細胞も錆びるのです。
現在、老化や9割以上の病気は、活性酸素によって起こると言われています。
活性酸素により体の細胞が傷つけられ病気になるのです。水中は紫外線が通らないので、太古の昔では、すべての生物が海中に住んでいました。しかしラン藻類の光合成により酸素が作られ始め、大気中にも存在するようになりました。
さらに酸素が増えオゾン層が形成され、紫外線(UV-C)はカットされ生物は地上で進化し始めました。ところがオゾンホールが出現し、再び紫外線(UV-C)が地上に降り注ぐようになりました。その結果、活性酸素により皮膚ガンや白内障になると警告されています。

さて動物は、体を動かせ紫外線から逃げることができますが、植物はできません。そこで植物は、紫外線を反射したり、吸収し活性酸素を除去する物質を作り出します。これが“抗酸化物質”であり、体内の錆取り物質と考えればわかりやすいでしょう。また花や果実の色であるカロチンやアントシアニンなどは、この日除け物質です。だからUVカットの温室で果実を栽培すると、紫外線を受けないため色が悪くなります。ちなみにビタミンCも同様ですが、ヒトでは作り出せないのでミカンを食べることで、肌の老化防止になるのです。

このようなメカニズムでタンニンは、“抗菌作用”・“抗酸化作用”を持っていたのです。ところでタンニンの抗菌性とフッ化物の歯質強化作用を期待して作られたのがHY剤含有のセメントです。さて筆者は、HY剤配合セメントをう蝕感受性の高い萌出途上歯のテンポラリー・シーラントとして利用してきました。(図1)このセメントについて最近、面白いことに気がつきました。それは、セメントの上には歯垢が付きにくいのです(図2)。そこで実験を行ってみました。
 
 
図1

 
 
図2

 
 
蔗糖20%の培地を作り、HY剤配合セメントで仮封した永久歯を入れ37℃で培養しました。2日後のコントロール群では、多量の歯垢が付着しています。
(図3)しかし、実験群の歯の表面には歯垢が付着していますが、セメントの上には見られません。(図4)4日後では、セメントの上にも付着が始まりました。このことからHY剤配合セメントには、歯垢の付着を抑制する効果があることがわかりました。(図5)タンニンの“抗菌作用”・“抗酸化作用”は、ヒトの口の健康にも影響をおよぼしていたのです。
 
 
図4

 
 
図5

 
 
図6

 
 
□■ 岡崎先生のホームペ-ジ http://leo.or.jp/Dr.okazaki/