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お茶はどうして体に良いのか? その1

2006年09月19日

最近、“うがいをすると風邪の予防になる。”・“病原性大腸菌であるO-157の増殖を抑制する”・“ミュータンス菌の増殖を抑制する。”など、お茶の効能が注目されています。これらはお茶の渋であるタンニンの抗菌作用によるものです。
タンニンは英語のタンニングからきている言葉で、皮などを“なめす”という意味です。動物の皮を“なめす”ことによって“革”にします。“なめす”とは、タンニンによりたんぱく質の“皮”を固定し、細菌やカビなどから守り安定な物質にすることです。毛皮や革靴が腐らないのもこのためです。
それでは何故、お茶に含まれるタンニンには抗菌性があるのでしょうか?タンニンは、植物由来の物質です。植物は、動くことができません。一方的に、動物や昆虫に食べられてしまいます。そこで植物は、食べられないように、カビや細菌に侵されないように、体を守る物質を作り出してきました。

例えば、回虫などの寄生虫を体内から追い出す“虫下し”があります。これは植物が、虫に食べられないように、虫が嫌う物質を作り出したものです。それをヒトは、口から入れて、寄生虫を追い出すのです。また、歯科用の薬剤であるカンファー・カルボール(CC)のカンファーは、樟脳(しょうのう)で樟(くすのき)から作られます。樟脳は、衣類の防虫剤でもあります。これは楠が作った、虫よけ物質です。虫よけ物質は、同時に細菌やカビよけ物質でもあります。ミカンがすっぱい(pHが低い)のも、動物や昆虫に食べられないようにするためです。ちなみに口腔内のほとんどの菌は、中性からpHが下がりpH5.0に到達するまでに死滅します。また、酸に強い(耐酸性菌)のミュータンス菌もpH4.8程度で、さらに酸に強い乳酸菌でもpH4.0以下では生きていくことができません。これなども酸がカビや細菌に対する防御作用であることがわかります。だからミカンが甘くなる(pHが上昇する)と、カビが生え腐りやすくなります。このように植物は、熟していない間は硬い殻や苦い味を作り出し、食べられないようにします。しかし、種が十分完成し発芽させる能力を持つと、植物は果実を甘くします。そして他の動物に食べさせ、未消化物の種を含む糞を遠くに撒き子孫を残すのです。このように植物は体を守るため、アルカロイド(コカイン・ニコチン)、やタンニン、フェノールなどを作り出します。だからタンニンには抗菌作用があるのです。

余談ですが、爪楊枝の“楊”は“柳”を意味します。古くから柳の楊枝を使うと、歯の痛みに効くことが知られていました。釈迦も柳の枝を噛んでいたことは有名です。そこで柳の成分から、取り出されたのが鎮痛解熱剤のサリチル酸であり、風邪薬などに含まれるアスピリンの原料となっています。暑かった今年の夏も過ぎようとしています。これから秋を迎え、寒暖の差が激しくなってきます。風邪を引いてしまうと患者さんに迷惑をかけます。引きそうだなと思ったら、お茶でうがいすることをお勧めします。