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握手のおかげで一つ名医になれた気がします

2006年09月04日

私は、子どもの診療が終わったら、帰る前に必ず握手をすることにしています。
子どものためと思って一生懸命診療しても、泣いたまま帰すと、次回はもっとたいへんになります。あるいは、いつの間にか来なくなる患者さんになります。
でも笑顔で握手をするように心がけていると、次第に子ども達は良い顔になります。そうすると、次第に上手に診療を受けることができます。また、そんな子ども達は、成人しても来てくれる患者さんになります。握手するだけで、こんな大きな違いが生まれます。

さて昨年、沖縄県のある病院の院内研修会によんでいただきました。腎臓透析センターも併設しており、スタッフは約100名の病院でした。どうして依頼をいただいたのかわからなかったので、内科の先生に聞きました。腎臓透析に至る一番の原因は糖尿病です。糖尿病について怖がらせ指導ばかりすると、治療を中断するそうです。まだ他の病院で管理をしていただければ良いのですが、悪化して腎臓透析を余儀なくされる状態で戻ってこられるそうです。そのような患者さんに対する話法について、聞きたいとのことでした。講演会の最後に“子どもに握手をして帰すことを実践している”という話をしました。

今年になって、その先生とお会いしたら、握手を実践しているそうです。驚いて、「成人相手に握手をすると恥ずかしくありませんか?」と尋ねました。そうすると、「難しい患者さん・一生懸命治療しているのですが思い通りにいかない患者さんほど握手をするようにしているのです。そうすると誰もが、ニッコリして良い表情をされるのです。おかげさまで、私は一つ名医になれた気がします。」と言われました。握手には、こんな効果があるのです。

また今年、少年院の少年に話をする機会をいただきました。そこでも、院長に「子どもの治療が終わり帰るときには握手をしている。」「内科医が、握手のおかげで一つ名医になれた。」という話をしました。そうすると「今日は、いい話を聞いた!」と言ってメモを取られていました。

それ以来、院長は少年達が退院するときに握手をされているそうです。少年犯罪の多くは、“我慢ができないこと”がきっかけで起こっています。だから少年達は“厳しい生活”を送っています。言い換えれば“守らなければならないルール”の多い生活を通じて“社会に出ても我慢できる心”を教えているとも言えます。そんな生活ですから、冷酷非情な職員と思っている者も多いことでしょう。でも握手をすることで“本当は君達のためを思って、つらく接してきたんだ。”というメッセージを伝えておられるのでしょう。“手のぬくもり”は、“心のぬくもり”でもあると思うのです。
 
 
さてあなたも明日から握手を実践しませんか?