2005年06月06日
ヒトは永久歯が抜けると二度と萌えることはない。
何度も萌えてくれば、歯科医院へ通わなくてすむのに・・。
そんなことを患者さんから言われたことはないだろうか?
ここで答えることができなければ、我々の負けである。
今回は、この理由について述べてみよう。
さて、サメは、歯が抜けても次々と萌えてくる。
たった1ヶ月で、すべて萌え代わるとさえ言われている。
ヒトにとっては、うらやましい限りである。
でも本当そうだろうか?
ヒトは、単細胞動物から魚類へ、そして両生類から爬虫類の時代を経て進化してきた。
この間45億年。
この時の流れが、ヒトの体に刻まれている。
その過程のなかで、必然性があったからこそ、萌えかわらない歯が誕生したのではないだろうか。
さて「サメが漁船を襲い、そこにはサメの歯が刺さって残っていた。」といった記事を見たことはないだろうか?
そう!サメの歯は、抜けやすい歯なのだ。
この理由は、簡単だ。サメの歯は、歯の根がない。
これがヒトの歯との大きな違いだ。
歯の根は、木の根と同じ。なければ台風で倒れてしまう。
抜けてもまた萌えてくるのから・・、という疑問の回答には、まだ至っていない。
さて、ご飯の中に砂粒が入っており、間違って噛んでしまったら顎はどうなるだろう?
とっさに口が開く。
一定以上の力がかかると歯が壊れてしまう。
これは歯に対する防衛作用である。
この役割をするのが、歯のクッション役の歯根膜。
歯根膜には、もっと他にも働きがある。
お司屋でマグロとタコを注文したとしよう。
顎の動かし方はどう違うだろう?
マグロは簡単に咬み切れる。
ところがタコは咬み切れない。
歯ごたえのある食べ物は、歯を微妙にずらして咬み切ろうとする。
そう!ヒトは食べ物に合わせて、顎の動かせ方を変化させて食べることができるのだ。
サメとヒトの歯には、もっと大きな違いがある。
サメの歯は、尖った歯ばかりである。
ところがヒトには、3種類の歯がある。
食べ物を咬み切る前歯、ひきちぎる犬歯、そして奥歯で咀嚼して飲み込む。
一方、サメはどうだろう?
サメは、食べ物に食らいつき、丸飲みするだけだ。
これでは歯ざわり、舌ざわりも楽しめない。
サメにとって歯とは、手に代わって獲物を捕らえる道具なのだ。
無理に噛むと歯が抜けてしまう。
ヒトでは、歯が抜けないように、歯の周りを囲む歯槽骨がある。
歯と歯槽骨の関係は、電球とソケットの関係と同じだ。
ソケットの役割をする歯槽骨のおかげで、歯が抜けないことがわかる。
さて歯周病。
これは歯垢や歯石によって歯槽骨が溶かされ、歯が動きだす歯グキの病気。
言いかえれば、ヒトの歯がサメの歯へと退化する病気なのだ。
ヒトの歯は一度しか萌え代わらない。
しかし、大切にあつかえば、一生保つようにできているのだ。