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ふしぎ・ふしぎ 咀嚼と健康 ~その20~ —イヌの歯ネコの歯—

2005年06月20日

唐突ではあるがクイズを一問。

イヌとネコは、両者とも食肉類であるが、どちらの方が歯の数は多いだろう。

1.イヌ
2.ネコ
3.同じ
 
 
さて、ヒトの歯数は32本、歯式は前歯2/2、犬歯1/1、小臼歯2/2、大臼歯3/3で表される。

これを足すと16本だが、両側あるので32本となる。

そもそも哺乳類の歯の基本型は44歯だ。

例えば、イノシシでは前歯3/3、犬歯1/1、前臼歯(小臼歯)4/4、後臼歯(大臼歯)3/3で、合計44歯である。

これが食性に応じて変化する。
 
 
ヒトは、すでに12本を失っていることになる。

第3大臼歯が退化傾向にあることは誰でも知っているが、すでに8本の小臼歯と4本の前歯が退化している。

そう言えば、上顎の正中に見られる過剰歯。
あれも退化の名残ではあるまいか?

きっとヒトの1番(中切歯)は、哺乳類の2番であったのだろう。
つまり哺乳類の1番が退化して、ヒトの過剰歯になったのではないだろうか?
上顎正中過剰歯は、遥か昔に失われた歯の痕跡ではなかろうか。

そんな目で、歯を眺めていると面白い。
 
 
ところで先ほどの解答であるが、イヌの方が歯は多い。

イヌは前歯3/3、犬歯1/1、前臼歯4/4、後臼歯2/3で合計42本。(図1)

 

図1

 
 

一方、ネコは前歯3/3、犬歯1/1、前臼歯3/2、後臼歯1/1で合計30本。

ネコは、12本少ないのだ。(図2)

 

図2

 

この歯数の違いが、そのまま顔に出る。
イヌの横顔は長いが、ネコでは短くて丸い。
横顔の長さの違いは、歯の数にあったのだ。

でも、どうしてネコの方が少ないのだろう?

この疑問に答えるために、肉食動物の歯の形態について考えてみる。

一般に肉食動物は、裂肉歯(れつにくし)と呼ばれる歯がある。

イヌやネコでは上顎の最後方の前臼歯が、下顎では最前方の後臼歯が、もっとも大きい。

これで、大きな肉を切り裂くのだ。

ちなみにハイエナでは、ライオンの食べ残しの骨まで砕くから“骨砕歯(こつさいし)”と呼ばれる歯まである。(図3)

 

図3

 
さてネコは、前臼歯の占める割合が大きい。
イヌより肉食傾向にあることを意味しているのだ。

一方イヌは、ネコほど肉食に偏っていない。

肉食から、食性の広い雑食動物になる方が、後臼歯が発達する。
後臼歯は、噛み砕くための歯なのだ。

例えば、雑食性のクマは、後臼歯の咬合面が広く、噛み砕くことに適した歯を持っている。(図4)

 

図4

 
 
それでは草食動物は、どうだろう?

草を磨り潰すために、すべての咬合面が広く平らになっている。
前臼歯も後臼歯も、同一に変化したことがわかる。(図5)

 

図5

 
 

歯の形態と、その比率を見れば、その動物の食性が一目瞭然なのだ。
 
 
ところで本来、 前臼歯は肉食、後臼歯は雑食の歯なのに、ヒトにおいては“臼歯群”として一つにまとめられてきた。

これはヒトの歯が見事なほどに、食性に合わせ調和し、進化してきた賜物であるがわかる。
 
 
ヒトの歯は、かくも巧妙にできているのだ。