スマートフォン版サイト

MAIL MAGAZINE メールマガジン

ふしぎ・ふしぎ 咀嚼と健康 ~その18~ —1本の歯から—

2005年05月16日

現在、国立科学博物館(東京・上野公園)では、「恐竜博2005 ~恐竜から鳥への進化~」が開催され、未来の小さな科学者でいっぱいである。

まもなく6月のむし歯予防週間、この季節には学校などから、子ども達向けに歯についての話して欲しいと依頼を受けた先生も多いことだろう。

そこで恐竜と歯の話題について紹介する。(図1)

 

図1
恐竜と歯

 
 
はるか2億3000万年前から6500万年前、恐竜が地球上を謳歌していた時代があった。

それはヒトに比べ遙かに長い歴史を持っている。
恐竜の存在は、我々をいにしえの世界に誘ってくれる。
さまざまな種類の恐竜は、何を食べていたのであろうか?
最も簡単な見分け方、それは“歯”である。

肉食恐竜の鋭く尖った歯、それは闘争の武器であると同時に肉を食いちぎり骨までかみ砕いていた。(図2・3 肉食恐竜の歯)

 

図2
肉食恐竜の歯1

図3
肉食恐竜の歯2

 

一方草食恐竜は、目の粗いヤスリ状の歯によって固い植物く茎や葉をすりつぶして食べていた。(図4・5 草食恐竜の歯)

 

図4
草食恐竜の歯1

図5
草食恐竜の歯2

 
 
さて恐竜についての研究は比較的新しい。
最初に発見された恐竜の体の部位は、どこかご存知か?

1822年、イギリスにマンテルと呼ばれる医者がいた。
往診の途中で、道路工事のために積まれた土の中に一つの黒光りする石を発見した。
それは見たこともない歯の化石であった。(図6)

 

図6
歯の化石

 

いったいどんな動物のものだろう。

当時は、世界に冠たる大英帝国の時代、世界中の“知”が結集されていた。

しかし世界最高の科学力を持っていても、これは何の歯であるかわからなかった。
サカナでもない、動物のサイでもない

ある日、南米のイグアナの研究家、スタッチベリィーがこれを見て、爬虫類のイグアナの歯そっくりであることを指摘した。

そこでこの歯の持ち主の恐竜を“イグアノドン”と名づけた。(図7)

 

図7
イグアノドン

 

イグアノドンとは、“イグアナの歯”(odont=歯)を意味している。
この歯がきっかけとなって、多くの恐竜が次々と発見された。
世界の恐竜の研究は、このたった1本の歯から始まったのである。
 
 
ところで歯が最初に発見されたのは、恐竜ばかりでない。
ジャワ原人、北京原人も歯の発見が契機となっている。
 
 
現在、知られている人類の最古の直系の祖先である“ラミダス猿人”(440万年前)も同様だ。
この歯を発見したのは、東京大学の諏訪 元先生。

歯の形態をよく観察すると下顎の第1乳臼歯。(図8)
この歯でサルとヒトを見分けることができる。

 

図8
下顎の第1乳臼歯

 

サルの特徴は、犬歯が発達しているが、ヒトは退化傾向にある。
この差は、第1乳臼歯の咬頭傾斜にも影響する。
咬頭が、もう少し尖ればサルの歯。しかし、この歯は平坦だ。
これが根拠となっている。

いろいろな見方があることに、恐れ入る。
 
 
さてそれでは、どうして歯が最初に発見されやすいのだろう。

歯の表面を覆っているエナメル質は体中でもっとも硬い。
だから化石として残りやすいのだ。

でも化石として残るためには、条件がある。
当たり前のことではあるが、むし歯がないことだ。

さて小・中学校に通っていた頃を思い出していただきたい。
歯の検診で毎年のようにむし歯を指摘された同級生がいたと思う。

ところが成人してからは、どうだろうか?
以前の様に、短期間に多くの歯がむし歯になることはない。

何故だろう?

実は歯は、はえた直後にむし歯になりやすい。
はえたての歯は、目で見たら硬そうに見える。しかし完全に硬くなってはえてくるわけではない。

たとえば流したてのコンクリートがあったとしよう。
目で見た限りでは、軟らかいか硬いかはわからない。
しかし足で踏むと、穴があいてしまう。
歯もこれと同じ軟らかいのだ。
歯が硬くなるのは3年かかる。

逆に考えれば、はえてから3年むし歯にしないと、以後にむし歯で悩まされる確率は減ってくる。

むし歯予防は、歯のはえた直後が勝負なのだ。
 
 
さて我々の歯も数億年先、誰かに発見されるだろうか。