2005年05月02日
ヒトの口は縦に開く。サカナの口も、両生類のカエルの口も、は虫類のワニの口も縦に開く。
当たり前の話である。
では、カニやエビの口はどうだろう?昆虫はどうだろう?
昆虫の顔をじっくり観察すると、口が横に開いていることがわかる。
例えば、クワガタムシ。クワガタムシの頭の大きなハサミのような部分。
これは大顎(おおあご)と呼ばれる。その内側には小顎(こあご)がある。
どうしてヒトの口は縦に開くのに、昆虫は横に開くのだろうか?
この秘密、実は動物の進化と関係が深い。
受精した卵細胞は、分裂を繰り返す。
ある程度まで分裂すると、表面には“小さなへこみ”が現れる。これを原口と呼ぶ。
そう!口が、最初にできるのだ。
口の窪みが徐々に深くなり、腸になる。
しかしこの時期は、食べ物の入り口と出口が一緒。口と肛門が同じなのだ。
これが原口動物。例えばクラゲの仲間。
そして、さらに腸が深くなり、とうとう反対側に穴が開く。口と肛門が出来上がる。
さて進化とは、いたずらものだ。
先に穴が開いたのが口になり、後で穴が開いたのが肛門になって進化していく動物。これを前口動物(旧口動物)と呼ぶ。
そして、先に穴が開いたのが肛門になり、後で穴が開いたのが口になる動物。これが後口動物(新口動物)だ。
穴の開き方で、昆虫になったりヒトになったりする。
ヒトは、どちらだろう?実は、へそまがりの後者の方だ。
そして、先に口ができる動物が、カニやエビの甲殻類、イカやタコの多足類、昆虫などの節足動物へと進化していく。
一方、先に肛門ができる動物が、魚類・両生類・は虫類・哺乳類等の脊椎動物となる。
そう言えば、ヒトの血液は赤い(ヘモグロビン 鉄)が、カニや昆虫の血液は青い(ヘモシアニン 銅)。これも穴の位置がもたらす差なのだ。
さて口が先にできる前口動物には、体が多くの節から成り立っている(体節)。例えば、ミミズを想像すればよくわかる。
ミミズは、水の多い場所を好む。しかし、食料を得て生存競争に勝ち残るためには、新天地を求めた方が有利だ。
かくして生き物達は、水から遠く離れていく。魚類が陸上に上がるのと同じ理屈だ。
さて、新天地を求めるためには、さまざまな進化が要求される。
まず乾燥に強くなければならない。そのためには、殻が必要だ。
昆虫の殻は、かくしてできる。
また遠くへ行くためには、歩く足が必要だ。
だから、それぞれの節から下に突起物が伸び足になる。
しかし、足だけでは歩くことは出来ても、獲物を捕らえることが出来ない。
そこで最も前にある足が、横に動き始め、手が出来る。
この横に動く手が、顎になり、かくして昆虫の口は、横に動くようになる。
そういえば、アーノルド・シュワルネガー主演の“プレディター”という映画。
映画の最後に出てくる宇宙人は、口が横に開いていた。
あの口を見て、誰もがグロテスクだと思ったことだろう。
でも宇宙人から見れば、ヒトこそグロテスクと思ったに違いがない。
いずれにせよ、さまざまな動物達は、獲物を捕らえ食べるために、形を変化させ進化してきた。
獲物を捕らえ、食べることが、大きな進化のエネルギーとなってきたことがわかる。
さて、食べ物が簡単に入る現在の日本。
進化のエネルギーは、?はたして存在しえるのだろうか?
( 岡崎先生のホームペ-ジ http://leo.or.jp/Dr.okazaki/ )