2016年12月19日
“メディアリテラシー”という言葉がある。
リテラシーとは、“与えられた情報を活用する力”を指す。
現在、インターネットの普及により簡単に情報が手に入るようになった。
しかしそれが正しい情報とは限らない。
いたずらに世間を混乱させているケースも多い。
例えば、「食後すぐに歯を磨かない方が良い」という情報が一人歩きしている。
筆者も患者さんからもよく聞かれる。
読者も、質問されたことはないだろうか?
しかし、番組を見ていないので、どう答えてよいかわからない。
どのような経過で誤解が生まれたのか?
その理由を見極め、今後の参考にしなければならぬ。
さて、これはテレビの科学番組での放送に端を発している。
では、どうしてこのような誤解が生まれるのか?
困っていたら、良い本に巡り合えた。
「ネットで見たけどこれってホント? 1 健康のメディアリテラシー」(北折 一著 少年写真新聞社)
である。
北折 一先生と言えば、NHKの人気番組“ためしてガッテン”が18年間に渡り高視聴率を稼いできた立役者である。
全国各地の歯科医師会でもよく講演されているので、ご存じの読者も多いだろう。
この本では、同じような事例を取り上げ、子ども達が理解しやすいように解説されている。
そこに、この問題が一人歩きした真相が書かれていた。
著者と出版社の許諾を得たので、その一部を紹介する。
それは以下の内容である。
1:ミュータンンス菌は、糖分を利用して歯垢を作る。そこから出る酸によって歯が溶かされる。
2:その後、唾液の再石灰化により元の状態に戻る。
さて、これがう蝕の話であればこれで良い。
しかし、この時の特集は“知覚過敏”であった。
楔状欠損などで、象牙質が露出していると酸により脱灰されやすい。
そこで象牙質を利用し、以下の実験が行われた。
1:象牙質を炭酸飲料に5分漬けると、10%以上軟らかくなった。
2:次に唾液に40分漬けると、ほぼ元の硬さに戻る。
これから“食後すぐに磨かない方がよい”と言う結論が導き出された。
加齢や歯周病により、歯肉が退縮すると象牙質が露出する。
当然、歯磨きには気をつける必要がある。
番組では誤解を防ぐため
“エナメル質で覆われている健康な歯は、すぐ磨いても良い”
との言葉を繰り返し伝えたり、字幕を入れるなどの配慮をしていた。
それにも関わらず、誰かが誤って情報を発信したのである。
それが広がり、今回の問題となったのだった。
ネット情報は、そのまま受け売りすると危険が多い。
常に正しい情報かを吟味しながら利用すべきである。
参考:1)ネットで見たけどこれってホント? 1 健康のメディアリテラシーのページ http://www.schoolpress.co.jp/s-5774/ お勧めの一冊です。
少年写真新聞社トップページ http://www.schoolpress.co.jp/
2)日本小児歯科学会 学会からの提言 食後の歯磨きについて http://jspd.or.jp/contents/main/proposal/index09.html
前 岡山大学病院 小児歯科 講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
岡崎 好秀
⇒ http://leo.or.jp/Dr.okazaki/