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乳幼児歯科健診【1】一人一フィールド

2017年01月05日

東京の某地域では、子育て支援の研修を受けた歯科医師を“デンタルサポーター”として認定する制度がある。

乳幼児は、サポーターの歯科医療機関で年に二度フッ化物の塗布を無料で受けることができる。

この制度には、フッ化部塗布だけでなくもう一つの目標がある。

これを“かかりつけ歯科医”のきっかけにすることである。

興味深い制度である。

でもその際、乳幼児が嫌がればどうなるだろう。

塗布時に泣けば、嘔吐するかもしれぬ。

ちょっとしたことで、せっかくの機会を失うことになりかねない。

これでは、あまりにもったいない。

さて、う蝕処置で歯科医院を訪れた場合は“術者”と“患者”の関係からスタートする。

ここでは“上下関係”がつきまとう。

処置のため、子どもが泣くこともあるだろう。

しかし、予防処置ではどうだろう?

“対等な関係”からスタートする。

それ故、泣きに対する配慮がより必要となる。

(図1)

もちろん、ていねいな指導や好感の持てる態度も大切だ。

そして、患者さんに気持ちよく帰ってもらう。

“かかりつけ歯科医”を目指すには、この点が欠かせない。

さて、かつて岡山大学 小児歯科では、
“一人一フィールド”という言葉があった。

すべての医局員が、さまざまな地域の乳幼児健診に出かける。

そこで、単に歯科健診を行うだけではない。

個々に合わせたう蝕予防の話をする。

保護者に歯に興味を持たせる話も重要である。

しかし話をする際、子どもが泣けば保護者はそちらに気を取られてしまう。

だから、泣かないように配慮する。

そして終了後は、保健師達とディスカッションをする。

発達に問題のある子ども達について相談を受ける。

逆に、離乳食の話や食べ方の問題などについて質問する。

こうして保健師との絆も深まる。

同時に、圧倒的多数の子ども達に接する中で“診る目”が養われる。

乳幼児健診を通じて、小児歯科医として多くのことを学んできた。

(図2)

これは他の医局員も同じだろう。

診療室の子ども達だけが、自分の患者ではない。

歯科健診に来る子ども達も、自分の患者なのである。

次回より、そこで学んできたことを紹介しよう。

前 岡山大学病院 小児歯科 講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
岡崎 好秀
http://leo.or.jp/Dr.okazaki/