2015年08月03日
1970年頃、某小児歯科医が小児歯科界の大御所、故・桑原美代子先生から
「この子珍しいよ!乳歯列なのにまったく空隙がない。永久歯になったらどんな歯並びになるのか心配ね!」と言われた。
それから45年、乳歯の閉鎖型歯列弓は当たり前、空隙歯列弓が珍しい時代になった。
さてこの図は、頭蓋骨の胎児から成人までの成長量の差。
その大半は、機能的な刺激によって促される。
これまで、舌機能が口蓋に及ぼす影響について述べてきた。
まず、最初は乳児期における母乳の深飲み。
舌が乳首を介して口蓋を押し広げる力として作用する。
(図2)
次に嚥下時、舌尖がスポットに当たる力が、切歯骨を前方に成長させる。
さらに前歯の咬断により、歯槽骨が添加し空隙の増加につながる。
また上顎骨は、縫合部で周囲の骨と接している。
しかも乳幼児期では、その結合は想像以上に緩い。
上顎複合体(動画)
http://okazaki8020.sakura.ne.jp/cgi-bin/zyougaku.wmv
この動画を見ると、咬合力や口腔周囲筋は、大きく成長に影響していることがわかる。
頬杖や寝癖などの態癖が、咬合に影響するのも当然だ。
さて嚥下時の舌の動きについても、さまざまな方向から考えてみた。
まず矢状方向から見ると、舌尖はスポットに当たり、前方からの蠕動様運動で食物を後方に移動させる。
次に水平方向から口蓋を見ると、舌尖がスポットに当たった後には側方へ広がる。
そして舌の外側縁は、前方から順に口蓋側歯頸部に当たり食物を後方に移動させる。
(図3)
この動きを水分が多いヨーグルトと水分の少ないパンで比較する。
ヨーグルトは、水分が多いので嚥下圧はあまりかからない。
しかしパンではどうだろう?
まずよく噛んで唾液と混ぜ合わせる。
舌が口蓋と強く接することが、口蓋を広げる力として作用する。
同時にこの力は、口蓋の深さを左右する。
口蓋突起は生後も伸び続けるため、舌の挙上が不十分だと口蓋が高くなる。
まさにヒトの口蓋の形態は、舌によって作られるのである。
前 岡山大学病院 小児歯科 講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
岡崎 好秀
⇒ http://leo.or.jp/Dr.okazaki/