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舌と口蓋 その【8】母乳の深飲み

2015年07月27日

生後3日と1か月の上顎模型を比較すると、口蓋は1か月でかなり大きくなっている。

(図1)
スライド1

この変化は、生後3か月までが著明だと言う。

口蓋の成長に関与するのは、まず授乳の状態が考えられる。

しかし歯並びは、母乳と人工乳で差がないという研究が多い。

人工乳首でも、機能の促進を考えられて作られたものもある。

授乳期間の問題もある。

さらには、母乳が出すぎる母親もいる。

これら複雑な要因が、一概に母乳の方が良いと言えない理由なのだろう。

実は、これまで母乳と人工乳の機能的な問題についての言及を避けてきた。

その理由は、単純である。

筆者は、逆立ちしても母乳を分泌することができない。

中途半端な憶測で話はしたくないからだ・・。

しかし、赤ちゃん歯科ネットワークの先生たちの資料を見るにつけ、母乳と顎発育の問題について触れておく必要があるように思う。

そこで母乳について少し述べてみる。

さて新生児は、舌が大きく、頬は脂肪層で満たされている。

口蓋は、中央に凹んだ吸啜窩がある。
(図2)
スライド2

この部分に乳首が取り込まれ安定する。

口腔の容積が狭く、わずかな力で授乳が可能となる。

誤解されがちであるが、母乳は出産したらすぐに出るものではない。

母乳は水道の蛇口と違うのである。

そもそも新生児が乳首をくわえることで、母親の脳からプロラクチンが分泌される。

このホルモンにより、初めて乳腺で母乳が作られる。

さらには、オキシトシンが分泌される。

これにより乳腺が収縮し、母乳が出るのだ。

すなわち哺乳の刺激が繰り返される中で、母乳がたくさん出るのである。
(図3)
スライド3

すぐに出ると言う母親がいると思えば、数日かかると言う者がいるのもこのためだ。

非常に個人差が大きいものなのだ。

母乳がすぐに出ないので、すぐに人工乳にたよってしまうことに問題がある。

さらに人工乳の孔を大きくし簡単に授乳させると、以後母乳を与えても嫌がられる。

そう言えばオキシトシンは、“愛情や信頼のホルモン”とも呼ばれる。

これが分泌されることで、母親が子どもを好きになり母親と乳児の絆を強くする。

母乳は、体のみならず、心の栄養にもなることがわかる。

さて、母乳育児の本には“深飲み”をさせると書かれている。

これは乳輪まで深くくわえて飲むことである。

一方、“浅飲み”は、乳首だけが口に入る状態を言う。
つまり口先だけで飲むことを指す。
(図4)
スライド4

母親が乳首を噛まれるのは、浅飲みであることが多い。

さて深飲みをすると乳首は吸啜窩まで入り、舌や口が大きく動く。

その時、舌の力が乳首に伝わり、さらには口蓋を押し広げる。

深飲みにより舌は乳首を介して、口蓋の成長に関与するのである。
続く

参考:
1.石田房枝、他:赤ちゃん歯科からの気づき
小児歯科臨床 Vol16 No.11,2011.
2.石田房枝:赤ちゃんの口腔内模型を読む 上顎犬歯部比と水平板
小児歯科臨床 Vol15 No.12,2010.
3.高木伸子:赤ちゃんの口腔内模型を読む 赤ちゃんの模型を取ってみて
小児歯科臨床 Vol15 No.12,2010.
4.島袋郁子:おっぱい飲んだら,歯並びは大丈夫!?
小児歯科臨床 Vol17 No.11,2012.
5.益子正範:口呼吸のサイクルから救え
口呼吸の予防&改善に役立つ10のヒント
歯科衛生士 2015年1月号

赤ちゃん歯科ネットワーク
ホームページ:http://babydnet.kenkyuukai.jp/about/
問い合わせ先 E-mail:babydnet@gmail.com

前 岡山大学病院 小児歯科 講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
岡崎 好秀
⇒ http://leo.or.jp/Dr.okazaki/