2015年07月06日
脳頭蓋は、神経型の成長により5歳頃に全成長量の85%が出来上がるという。
一方、顔面頭蓋は一般型に属するため、5歳までに40~45%、10歳では80%成長する。
さて上顎骨は、前頭骨や頬骨、それに蝶形骨等に接し縫合を介してつながり、これを上顎複合体と呼ぶ。
(図1)
上顎は、これらの縫合部において複雑に関係しながら成長する。
どの程度の結合だろうと思い、4歳児の側頭部を固定しながら、指を上顎の乳臼歯に当て軽くゆすってみた。
すると上顎複合体は、わずかな力で動いた。
動画挿入
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この時期の、縫合がいかに緩いかよくわかる。
逆に言えば、咬合力や舌筋など機能的な力が、以後の成長に大きく影響することが想像できる。
A君は、半円型のアーチで空隙もある。
きっと永久歯はきれいな歯列になるだろう。
一方、B君は狭くて空隙がなく、口蓋も深い。
将来の不正咬合になる可能性が高い。
両者の差は、どこまで遺伝で、どこまで後天的なものなのか。
もっと早期からB君に対する、アプローチ法はないものか?
これは母乳栄養と人工栄養の違いから、考えなくてはならないのか?
母乳と人工乳では、差がないという研究が大半だ。
でもそれは本当なのか?
舌や顎をしっかり動かすことが、成長に影響しないはずはないように思う。
筆者も小児歯科医であるが、じっくり診てこなかったことが悔やまれる。
さて、赤ちゃん歯科ネットワークという勉強会がある。
会では、新生児期から口腔内の印象を採り、口蓋の変化について調べておられる。
(図3)
その結果、赤ちゃんの口蓋の変化は、3か月までが非常に大きく、その後の成長に与える影響も大きいと言う。
ちなみに、これは生後3日目と1か月の上顎模型である。
この時期に、よく印象が採れたものだと驚かされる。
100円玉と比べると、大きさがよくわかる。
たった1か月で、かなり大きくなっていることがわかる。
(図4)
この背景には、どのような力が働いているのだろう?
続く
参考:
1.石田房枝、他:赤ちゃん歯科からの気づき
小児歯科臨床 Vol16 No.11,2011年
2.石田房枝:赤ちゃんの口腔内模型を読む 上顎犬歯部比と水平板
小児歯科臨床 Vol15 No.12,2010.
3. 高木伸子:赤ちゃんの口腔内模型を読む 赤ちゃんの模型を取ってみて
小児歯科臨床 Vol15 No.12,2010.
4.島袋郁子:おっぱい飲んだら,歯並びは大丈夫!?
小児歯科臨床 Vol17 No.11,2012.
5.益子正範:口呼吸のサイクルから救え 口呼吸の予防&改善に役立つ10のヒント
歯科衛生士 2015年1月号
赤ちゃん歯科ネットワーク
ホームページ:http://babydnet.kenkyuukai.jp/about/
問い合わせ先 E-mail:babydnet@gmail.com
前 岡山大学病院 小児歯科 講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
岡崎 好秀
⇒ http://leo.or.jp/Dr.okazaki/