2015年06月11日
口蓋の前方部をしめる切歯骨は、永久前歯の萌出前に成長がほぼ終了するという。
すなわち切歯骨は、前歯部の交換期には成長が停止し以後は大きくならない。
これは、切歯縫合の癒合と関係が深いと考えられる。
そこで発達期の頭蓋骨を比較してみた。
しかし上顎の第1大臼歯の萌出期には不明瞭となっている。
そして上顎中切歯や側切歯が萌出するにつれ、さらに癒合が進んでいることがわかる。
一方成人期の口蓋では、完全に上顎骨と一体化している。
(図2)
やはり切歯骨の発達は、切歯縫合の癒合と関係が深そうだ。
余談であるが、無歯顎者の口蓋を成人期と比較してみた。
無歯顎者は、ほぼすべての歯槽骨が失われている。
これは成人と無歯顎者の切歯孔の位置を見ればわかる。
無歯顎者の切歯孔が前方にあるのは、歯槽骨の欠損によるものである。
(図3)
話は戻って、この点からも永久前歯の捻転や叢生は、切歯骨の成長不全と考えられる。
だからこそ、乳歯列期に切歯骨を十分発達させておくこと必要がある。
それではどんな要素が切歯骨の発達につながるのだろうか?
一つは乳歯の切端咬合である。
乳歯の切端咬合の小児は、空隙歯列弓であることが多い。
これは、前歯部で咬み切り・引きちぎる食生活により、歯槽骨が添加され空隙につながるのではないだろうか。
他の一つは舌機能の問題ではないだろうか。
嚥下時には、舌が切歯骨のスポットに当たる。
乳歯列では、乳側切歯の口蓋側に永久側切歯の歯胚が見える。
しかし側切歯の萌出期には、正常に位置する。
また別の角度から見ても、側切歯は前方に移動していることがわかる。
(図4)
これは側切歯の歯冠は、舌圧により切歯骨を介して適正な位置になると考えられる。
従ってこの力が弱いと、側切歯は口蓋側に萌出することになる。
6年生で上顎が叢生になるケースは、2・3年生の頃,側切歯の萌出部の口蓋側が隆起すると述べた。
(図5)
まさにこの徴候こそ、舌機能の発達不全と言えるのではなかろうか。
続く
前 岡山大学病院 小児歯科 講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
岡崎 好秀
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