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舌と口蓋 その【1】“ソメイヨシノ”のふしぎ

2015年04月02日

今年も花見のシーズンが訪れた。

西日本から関東地方にかけて桜が満開となっている。

美しい桜を見るにつけ、この国に住んでいることを誇らしげに思う。

桜の開花は3月下旬に九州に端を発し、瞬く間に東北に向かって駆け上る。

さて桜が一斉に見ごろを迎えるのには理由がある。

この木は花芽を作ると休眠に陥る。
その後一定の寒さを迎えると休眠から覚め、暖かくなると開花するためだ。

その種類は、“ヤマザクラ”、“ヒガンザクラ”、それに“ミヤマザクラ”など数多い。

ところで桜前線は、“ソメイヨシノ”の開花予想日を結んだ線を指している。

どうして“ソメイヨシノ”なのだろう?
(図1)
okazaki_01_20150406
もっとも美しいからか・・・。

全国各地で咲き、圧倒的に多いからか・・・。

それとも葉が展開する前に、花が咲くからか・・・。

“パッと開き、パッと散る”。
これが日本人の心情に合うからか・・。

実は、他にもっと大きな理由があるのだ。

さて全国の“ソメイヨシノ”は。たった一本の木から始まった。

江戸末期、染井村(豊島区駒込)に住む植木職人が、挿し木と接ぎ木で作り出したものなのだ。

エドヒガンザクラとオオシマザクラの特徴をとったものであり、同一の遺伝子を持つクローンなのである。

だから花は咲かしても、発芽能力のないサクランボは子孫を残すことができない。

これまで読者が見た“ソメイヨシノ”は、染井村で誕生した原木を見ていることになる。

この木は、靖国神社に植えられ日露戦争の戦勝記念で、各地に植えられ広がった。

しかしクローンであるために、株ごとのばらつきがない。

このため、一定温度になると一斉に咲く。

そこで“桜前線”という言葉が誕生した。

だから、“菜の花前線”や“梅前線”などは存在しないのである。

しかし、クローンは弱点も多い。

環境の変化に対応することができないし、病気にも弱い。

沖縄や北海道東北では、気候が異なり咲かすことがないのだ。

毎年、見慣れている桜でも深く掘り下げて調べると興味が尽きない。

さて、我々が見慣れた口腔領域にも同じようなことがないだろうか?

当たり前だと思い、見落としていることはないだろうか?

筆者は、いつもそのようなことを考えている。

さて、ここで2つのケースを紹介する。

これは、佐賀県武雄市の小児歯科医 増田純一先生から拝借したものである。

A君とB君の小学校1年生から6年生までの口腔写真。
(図2)
okazaki_02_20150406
※参考

A君はきれいな歯列、B君は叢生がある。

さて、この差は何によって起こるのだろうか?

遺伝的要因なのか?

それとも他の要因もあるのか?

じっくり比較していただきたい。

つづく・・・。

※参考
Health Dentistry(健口歯科) 0歳から“噛む”で健康長寿
増田純一著 gradle発行 より
http://www.shien.co.jp/act/d.do?id=7413

 

前 岡山大学病院 小児歯科 講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
岡崎 好秀
⇒ http://leo.or.jp/Dr.okazaki/