2015年04月17日
佐賀県の増田純一先生と言えば、筆者の尊敬する小児歯科医の一人である。
先生は、長年小学校の学校歯科医をされてきた。
毎年、全員の口腔内写真を撮影し、そのコメントを家庭に返される。
そして卒業時には、6年間の変化をまとめてお祝いに差し上げている。
これまで6年間の資料が残っているのが約500名と言う。
さて先生は、6年生で正常咬合と不正咬合のある児童を2つの群に分けられた。
そして、それらの写真を過去に遡って丹念に見ていく。
これを繰り返すうちに、1年生の口腔を見ると、6年後の咬合がイメージされるようになる。
時間軸という“ものさし”から、咬合の推移を予測する目が養われるのである。
まさに、これらの写真は“宝の山”と言えそうだ。
そこで、何度も先生の診療室を訪ねた。
さてこれから紹介するのは、その一例である。
A君の上顎はきれいな歯列、B君は叢生がある。
両者の推移をじっくり比較していただきたい。
先生から6年生で上顎が叢生気味になるケースは、
“2・3年生の頃、U・V字形の歯列で、側切歯の萌出部の口蓋側が隆起した感じがする。
また口蓋も高い”と教えていただいた。
(図2)
なるほど! そのように見るのか!
でもどうして、この部分が隆起しているのだろうか?
この差は遺伝的なのか?
環境なのか?
そう言えば、筆者の診ているダウン症や、障害のため口腔の機能の未熟な子ども達も、この部分が隆起しているケースが多い。
(図3)
それでは、この謎を少しずつ解いていこう。
さてこれは4歳児の上顎の歯列。
口蓋の前方部には、側切歯の歯胚の部分に穴が開いている。
(図4)
そう!
B君は、側切歯の歯冠形成とともに、萌出相当部の口蓋が隆起してきたのだ。
ちなみにこの隆起は、1年生や側切歯萌出後は目立たない。
でもA君では、まったく隆起が見られない。
すなわち側切歯の萌出前の隆起は、前歯部の歯列不正のサインなのだ。
でもどうして口蓋が隆起するケースと、しないケースがあるのだろう?
これを次号までの宿題にしよう。
つづく・・・。
参考:
今回拝借した増田純一先生の写真の一部が以下の書籍で紹介されているのでご覧いただきたい。
Health Dentistry(健口歯科) 0歳から“噛む”で健康長寿 (gradle社発行)
http://www.shien.co.jp/act/d.do?id=7413
前 岡山大学病院 小児歯科 講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
岡崎 好秀
⇒ http://leo.or.jp/Dr.okazaki/