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歯科医から見た学校給食 その【8】牛乳と流し込み食べ

2015年03月12日

小学校で歯の話をした後、教室で給食を食べることになった。

教卓に座り、一斉に“いただきます”と言った後、驚くべき光景が目についた。

牛乳で流し込むようにして食べる子ども。

パンをちぎってスープに漬けながら食べる子ども。

“よく噛んで食べよう”どころの話ではない。

以前、診療中に子ども達の口に唾液がたまらないことについて述べた。

これは、水分による流し込み食べの影響ではないかと思っている。

歯科的にも、流し込み食べを防ぎたいものである。

さて、サザエさんのマンガを眺めていると“ある特徴”がある。

それは“ちゃぶ台”には、急須や湯呑み茶碗が置かれていないことだ。

湯呑みが描かれるのは、食後の団欒の場である。

このマンガは昭和30年から40年代のものだから、その頃はお茶を飲みながら食べる習慣がなかったのだ。

筆者の子どもの頃は、食事の最後にお茶を茶碗に少しれ、米粒を取りながら飲んでいた。

食事中にお茶を飲むと“行儀が悪い”と言われたものだ。

日本食のマナーにも“食事中にはお茶を飲まない”とある。

確かに、福井県の永平寺などの宿坊に泊まると、お茶は最後にしか出てこない。

いつのまにか、日本の食事文化が変わっているのである。

もちろん会席料理では、お酒やビールと共に食事が進む。

飲めない方に、“お茶は最後に・・・”とは言えない。

ただ、最近の流し込み食べの問題はひどすぎる。

水分がないと食べることができないのは、子どもだけではない。

若者だって、保護者だってそうである。

どうして、このように変わってきたのだろう?

そう言えば、レストランも最初に水が出る。

でもあれは、注文を取りに行ったことを確認する意味だ。

他にどんな理由が考えられるだろう?

実は、ここにも学校給食の影響があるように思う。

子ども達の保護者の世代も給食で牛乳を飲んできた。

これが食卓には、飲み物を置く習慣につながったのではないか。

どう考えても、給食の牛乳と噛む回数は反比例する。

子ども達の悪しき癖を治しておきたい。

そこである小学校での試みを紹介する。

それは、“牛乳は、給食の最初と最後に飲む”というものだ。

まず子ども達が“いただきます!”と言った後、牛乳のキャップを開けて一口だけ飲んで口を潤す。

そして、キャップを閉じて食べる。
(図1)
okazaki_01_20150316

すべてを食べ終わった後、残りの牛乳を飲む。

これだけで、よく噛んで食べるようになったと言う。
(図2)
okazaki_02_20150316

どうやら飲み物は、食事の最初と最後にした方が良さそうだ。

前 岡山大学病院 小児歯科 講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
岡崎 好秀
⇒ http://leo.or.jp/Dr.okazaki/