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歯科医から見た学校給食 その【7】牛乳と乳糖不耐症

2015年02月26日

50歳以上の方に“学校給食”と言えば、まず思い出すこと。

それは、あのまずい脱脂粉乳だろう。
(図1)
okazaki_20150302_01

どうして学校給食で脱脂粉乳を出すようになったのだろう?

それは、戦後の混乱期に遡る。

以前述べたように、GHQは学校給食を実施するよう日本政府に勧告した。

その際、「小麦と脱脂粉乳のどちらが良いか?」と日本の有識者に聞いたのだ。

東北大学医学部 衛生学 名誉教授の近藤正二先生は「脱脂粉乳」と答えた。

単に、空腹感を満たすだけなら“小麦”を選ぶはずだ。

しかし、教授は言った。

「脱脂粉乳でお腹いっぱいにすることは難しいが、貧弱になった体格を元に戻すことはできます。
小麦粉では身長が伸びないのです。」

当初、GHQは小麦を予定していたが、日本側の意見を取り入れたのである。

さて脱脂粉乳は、 牛乳からバターを取り除いたスキムミルクのことである。

缶コーヒーの成分表にも、たいてい“脱脂粉乳”の文字がある。

ここで、脱脂粉乳と牛乳の栄養を比較してみよう。
(図2)
okazaki_20150302_02

脱脂粉乳は、脂質が少ないものの栄養に富むことがわかる。

しかも安価であるため、援助の中心となってきた。

これが牛乳に置き換わったのが昭和40年代。

その理由として“まずい”・“おなかをこわす”・“細菌が繁殖しやすい”・“変質しやすいなどがあった。

しかし最大の理由は、食生活が豊かになったことである。

さて牛乳の飲用には、牛乳不耐症の問題がつきまとう。

乳糖を消化できないために腹痛や下痢の原因となる。

これは、乳糖を分解するラクターゼの不足や欠損によるものだ。

実は、筆者もその一人である。

そもそも乳糖は、乳以外には存在しない。

乳腺では、わざわざブドウ糖から乳糖を作り出す。

しかも体内では、ラクターゼにより乳糖をブドウ糖に分解し小腸から吸収させる。

どうして体は、かくも面倒なことをするのだろう?

さて血液中でのブドウ糖は、70mg~140mg/dLの濃度に保たれる。

これを大幅に越えるのが糖尿病であり、さまざまな問題を引き起こす。

細胞にとって140mg/dL以上のブドウ糖は毒なのだ。

しかし新生児は、急激に発達する時期にあり多量のブドウ糖が必要である。

そこで体は考えた。

「すべての細胞にとって乳糖は無毒である。
だからブドウ糖から乳糖を作り出す。
そして体内で、徐々にブドウ糖に戻せば良い。」

かくして乳糖分解酵素のラクターゼが誕生した。

ヒトの体はかくも巧妙に作られているのだ。

ところが離乳が進むと、ラクターゼの分泌能が低下する。

すると乳糖は、未消化のまま大腸に達する。

そこで浸透圧の違いにより、大腸は多量の水分を奪われる。

こうして下痢を引き起こすのである。

日本では、かつてより乳糖不耐者が減少していると言う。

これは牛乳の飲用習慣が増えたことを意味しているのだ。

前 岡山大学病院 小児歯科 講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
岡崎 好秀
⇒ http://leo.or.jp/Dr.okazaki/