2015年02月26日
50歳以上の方に“学校給食”と言えば、まず思い出すこと。
どうして学校給食で脱脂粉乳を出すようになったのだろう?
それは、戦後の混乱期に遡る。
以前述べたように、GHQは学校給食を実施するよう日本政府に勧告した。
その際、「小麦と脱脂粉乳のどちらが良いか?」と日本の有識者に聞いたのだ。
東北大学医学部 衛生学 名誉教授の近藤正二先生は「脱脂粉乳」と答えた。
単に、空腹感を満たすだけなら“小麦”を選ぶはずだ。
しかし、教授は言った。
「脱脂粉乳でお腹いっぱいにすることは難しいが、貧弱になった体格を元に戻すことはできます。
小麦粉では身長が伸びないのです。」
当初、GHQは小麦を予定していたが、日本側の意見を取り入れたのである。
さて脱脂粉乳は、 牛乳からバターを取り除いたスキムミルクのことである。
缶コーヒーの成分表にも、たいてい“脱脂粉乳”の文字がある。
脱脂粉乳は、脂質が少ないものの栄養に富むことがわかる。
しかも安価であるため、援助の中心となってきた。
これが牛乳に置き換わったのが昭和40年代。
その理由として“まずい”・“おなかをこわす”・“細菌が繁殖しやすい”・“変質しやすいなどがあった。
しかし最大の理由は、食生活が豊かになったことである。
さて牛乳の飲用には、牛乳不耐症の問題がつきまとう。
乳糖を消化できないために腹痛や下痢の原因となる。
これは、乳糖を分解するラクターゼの不足や欠損によるものだ。
実は、筆者もその一人である。
そもそも乳糖は、乳以外には存在しない。
乳腺では、わざわざブドウ糖から乳糖を作り出す。
しかも体内では、ラクターゼにより乳糖をブドウ糖に分解し小腸から吸収させる。
どうして体は、かくも面倒なことをするのだろう?
さて血液中でのブドウ糖は、70mg~140mg/dLの濃度に保たれる。
これを大幅に越えるのが糖尿病であり、さまざまな問題を引き起こす。
細胞にとって140mg/dL以上のブドウ糖は毒なのだ。
しかし新生児は、急激に発達する時期にあり多量のブドウ糖が必要である。
そこで体は考えた。
「すべての細胞にとって乳糖は無毒である。
だからブドウ糖から乳糖を作り出す。
そして体内で、徐々にブドウ糖に戻せば良い。」
かくして乳糖分解酵素のラクターゼが誕生した。
ヒトの体はかくも巧妙に作られているのだ。
ところが離乳が進むと、ラクターゼの分泌能が低下する。
すると乳糖は、未消化のまま大腸に達する。
そこで浸透圧の違いにより、大腸は多量の水分を奪われる。
こうして下痢を引き起こすのである。
日本では、かつてより乳糖不耐者が減少していると言う。
これは牛乳の飲用習慣が増えたことを意味しているのだ。
前 岡山大学病院 小児歯科 講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
岡崎 好秀
⇒ http://leo.or.jp/Dr.okazaki/