2013年11月13日
平成25年5月、徳島大学歯学部に「人体解剖と骨のミュージアム」がオープンした。
ヒトの骨や内臓、さらには動物の頭蓋骨など約320点の標本が常時展示されている。
通常、このような展示は医療従事者や学生にのみ公開されている場合が多いのに対して、一般にも公開されている点がユニークだ。
多くの人々に体の仕組みを知ってもらい、命や自身の健康について考えるきっかけにしてもらえればと言うことだ。
開館時間は毎週水曜日の午後。
あらかじめ予約をし、ミュージアムの責任者である北村清一郎教授に案内していただける。
北村教授と言えば、歯科臨床に最も近い研究をされる解剖学者の一人だ。
総義歯の印象採得や摂食嚥下療法の際、先生の著書が非常に役立つ。
頭の中に解剖のイメージを思い浮かべることで、外から見えないところを推察する。
一般の方が見えないものを診ること。
これこそが臨床現場で求められていることである。
若い時に先生の講義や実習を受けることができなかったのが残念だ。
多くの著書があるので、一度は目を通された読者も多いだろう。
臨床と基礎の融合とは、このような取り組みを指すのだと思う。
さて、私が訪問させていただいた時にも、さまざまな展示品を見せていただいた。
収蔵品は、これまで多くの先生方が苦心して収集し作製されたものだ。
まさに宝の山である。
小児歯科医として興味を持ったのは、1歳~1歳6か月児の頭蓋骨の標本である。
まだ下顎の第2乳臼歯が顎骨内に隠れたままなのだ。
また2~3歳児、6~8歳児の骨を見れば、歯のダイナミックな交換が手に取るようにわかる。
お宝は、まだまだいっぱいだ。
一番驚かされたのは耳小骨である。
耳小骨は、小さいのでスケッチでしか見たことがない。
しかし、ここには“本物”がある。
体内で最も小さな“アブミ骨”は、長さ2.6‐3.4mm、重さ0.002‐0.004gである。
鼓膜からツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨を介して振動が内耳に伝わる。
これらの骨を連結させ、テープで固定して展示されていた。
おそるべき忍耐と集中力がなければできることではない。
さらに大阪の東急ハンズまで出向き、バー・ルーペを探し出したと言う。
おかげで、拡大した骨をじっくり観察することができる。
(図3)
これらを講義・実習と研究の合間を使って作製されており、現在も取り組んでおられる。
まさに執念の逸品である。
先生を駆り立てている理由。
それはより良き医療従事者の育成のため、まさに教育者の鏡と感じいった。
徳島大学歯学部 人体と骨のミュージアム:
見学希望者は以下から、北村教授にご連絡ください。
⇒ http://www.tokushima-u.ac.jp/dent/museum.html
*「人体解剖標本の展示」を11月16日(土)と17日(日)の午前10時から午後4時、徳島大学歯学部1階の解剖実習室とミュージアムで開催します。
解剖模型コーナー、人体標本コーナー、人体解剖DVDコーナーなどがあり、解剖学の知識を深めるのに役立ちます。
参加者は医療従事者と医療系学生に限ります。無料です。
問い合わせは、徳島大学歯学部口腔顎顔面形態学分野 電話088(633)7320。
お時間があれば、是非ご覧ください。
参考:北村清一郎先生の主たる著作
1:臨床家のための口腔顎顔面解剖アトラス 医歯薬出版
2:総義歯を用いた無歯顎治療―口腔解剖学の視点から クインテッセンス出版
3:なぜ「黒岩恭子の口腔ケア&口腔リハビリ」は食べられる口になるのか デンタルダイヤモンド
前 岡山大学病院 小児歯科 講師
モンゴル健康科学大学(旧:モンゴル医科大学) 客員教授
歯のふしぎ博物館 館長(Web博物館)
岡崎 好秀
⇒ http://leo.or.jp/Dr.okazaki/