2011年01月05日
チンパンジーなどの霊長類は、どれだけ知的レベルが高くてもマ行・バ行・パ行・ファ行などの口唇音しか出せないと述べた。
それでは、どうしてこれ以外の言葉を発することができないのだろう?
実は、これ解剖学的な問題なのである。
発声というと、まず声帯を思い浮かべる。
声帯は、筋肉と靭帯からできており呼気により振動する。
しかし、それだけでは声にならない。
単なる雑音でしかない。
声帯は、ギターに例えれば弦にあたる。
弦だけでは音を奏でることができない。
ギターは、胴体の中空の部分で共鳴させ、始めて音となる。
これは太鼓や笛なども同様だ。
共鳴腔が言葉を発する上で、いかに重要であるかがわかる。
さて、ヒトにおける共鳴腔。
それは咽頭や口腔である。
でもチンパンジーは、咽頭腔や口腔があるではないかと言われよう。
実は、その鍵。
共鳴腔の容積なのである。
言葉は、二足歩行と関係が深い。
二足歩行を行うことで重力により気管や気管支、それに肺が下降する。
それに伴って、喉頭の位置も下がり咽頭腔が広くなる。
まず乳児の首がすわる生後3ヶ月頃に喉頭は下降し始める。
続けて、立って歩き始める頃には急速に下がる。
そして3歳時には成人の位置付近に近づき、さらに運動能力が増す5歳時には、ほぼ同じ位置となる。
残念ながらチンパンジーは、完全二足歩行ができない。
そのために、口唇音がやっと出せるに過ぎない。
さて人間は、その後も重力対応で喉頭の位置が下がる。
これが高齢者の誤嚥の原因となる。
ヒトは、誤嚥の危険性と引き換えに言葉を得たのである。
続く
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