2010年03月01日
今回は、生活歯髄切断法のコツについて述べます。
乳歯の深部齲蝕は、速やかに歯髄死を来たします。
そのため抜髄の頻度は多くありません。
一方、乳歯は象牙質が薄く歯髄腔も大きいため、深部齲蝕の処置で予後が不安な場合は、1ランク進んだ処置を行った方が懸命です。
そこで乳歯の生活歯髄切断法の登場です。
さて生活歯髄切断法は、FC法と水酸化カルシウム法があります。
FC法は、その強力な殺菌力のため適応症が広いとされています。
簡単な術式です。
1:浸潤麻酔
2:ラバーダムの装着
3:軟化象牙質の除去
4:髄腔開拡と天蓋除去
5:清潔なロングネックラウンドバーによる根管口での歯髄切断
6:髄腔内の洗浄(その後、FC法では切断面にFC綿球を置く)
7:止血確認後、水酸化カルシウム糊剤もしくはFCネオダイン糊剤の包摂
8:裏装
さて、生活歯髄切断法の適応症は、感染が冠部歯髄に限局している場合です。
切断面から出血し、止血が困難な場合は、根部まで炎症が波及していると考えられ抜髄の適応症となります。
出血したまま処置をすすめると、髄床底に死腔をつくり予後不良の原因になります。
(以前にも述べたように、乳歯は、髄床底から根分岐部への側枝が多いので、病巣の原因となります。)
しかし・・です。
止血しないのは、根部歯髄の状態だけではありません。
子どもが泣くと血圧が上がるので、止血困難となります。
そこで、FC2回法に切り替えます。
この術式は、6の段階でFC綿球を置きセメントで緊密に仮封します。
そして次回来院時に、髄腔内を洗浄後、FCネオダイン糊剤を包摂します。
(この時も、髄床底をきれいにして死腔を作らないようにします。)
このFC2回法の処置は、歯髄組織が固定されるため“半失活歯髄切断法”とも言えます。
そこで2回目の来院時、歯髄切断面に置く糊剤は厳密にはFCネオダインですが、筆者はビタペックスを用いています。
初回の処置は、局所麻酔を行うため小児にとっては嫌な処置です。
しかし2回法を用いれば、2回目の処置は簡単なので小児の心には有利に働き、3回目の処置が楽になります。
番外編:
低年齢児では、疼痛がありそうですが泣きのため、生活歯なのか歯髄死を来たしているのか臨床的に判断しかねる場合があります。
この様な場合は、とりあえず局麻酔を行い、ラバーダムを装着後、生活歯髄切断法の2回法に準じた処置を行い、FC綿球を貼薬しセメントで緊密仮封をします。
次回来院時に、セメント除去後綿球の臭いをかぎます。
もし腐敗臭がすれば、感染根管治療に移行します。
FC臭がするようであれば、FCの2回法に準じて処置を進めます。
もちろん注意深い予後の観察が必要です。
>>岡崎先生のホームペ-ジ
http://leo.or.jp/Dr.okazaki/