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インフルエンザ考【その10】~未知の部分~ 上咽頭

2018年07月17日

咽頭部には、舌扁桃、口蓋扁桃、耳管扁桃、咽頭扁桃がある。

これらワルダイエルの咽頭輪は、口や鼻からの感染防御としての働きを持つ。
(図1)

さて歯科医師は、日常口腔の奥にある中咽頭まで目に入る。
しかし、軟口蓋の裏にある上咽頭は未知の部分である。
そこで今回は、上咽頭について触れてみる。

さて左右の鼻孔から吸い込んだ空気は、鼻中隔の後方で一つに合流する。
その奥には咽頭壁が立ちはだかり、大きく下に向きを変える。
運転に例えると、急カーブで速度を落とす場所と言える。
まさに、渋滞の発生ポイントだ。
(図2)

これが口蓋垂の裏にある上咽頭の特徴である。
中にはハンドルを切り損ね、ガードレールに接触する車もあるだろう。
部品が落下するかもしれぬ。
同じように上咽頭も、空気中の細菌や埃が停滞しやすい。

しかし、ヒトの体は精巧だ。
鼻腔から上咽頭の粘膜は、デリケートな繊毛上皮でできている。
表面からは、ネバネバした粘液が分泌される。
まるでゴキブリ〇イ〇イのように、埃や細菌にまとわり付く。
(図3)

そして繊毛がベルトコンベアの様に動き、喉に向かって運び出す。
こうして痰として排出されるか、嚥下して胃液で殺菌されるのだ。
(図4)

ちなみに口腔や中・下咽頭から食道は、繊毛を持たない重層扁平上皮で覆われる。
飲食物の物理的刺激や温度により傷つきやすい。
そのため強靭な組織でできている。

また上咽頭は、肺に対するさまざまな防御システムを持つ。
例えば、ヒトの肺は寒さに弱い。
寒冷地で口呼吸をすると、肺に痛みを感じることからもわかる。
冷たい空気を吸い込んでも上咽頭を通る時は31-34℃、気管では36℃まで加温される。
さらに、ヒトの肺は乾燥にも弱い。
この理由、肺の進化から考えるとよくわかる。
魚類は、水中で鰓を利用し酸素を取り入れ二酸化炭素を排出する。
ヒトの肺は、魚類の鰓が体内に入ったものと言える。
そのため湿度100%で楽に呼吸ができるのだ。
(図5)

実際、乾燥した空気でも上咽頭で湿度80-85%、下気道では95%まで上昇する。

さて上咽頭の防衛システムは強力だが、その構造上細菌やウイルスが侵入しやすい。
ここは、風邪を引いた時に最初に痛くなる場所なのだ。       続く

前 岡山大学病院 小児歯科 講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
岡崎 好秀
http://leo.or.jp/Dr.okazaki/