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インフルエンザ考【その8】口腔ケアで発症が1/10!!

2018年06月15日

インフルエンザウイルスは、発症のために2つの武器を持つ。

一つ目のHA(ヘマグルチニン:赤血球凝集素)については、前回述べた様に宿主細胞への侵入に関与する。

もう一つは、NA(ノイラミニダーゼ)という酵素。

これは細胞内に侵入したウイルスの増殖と拡散に関与する。
(図1)

ちなみに、タミフルに代表される抗インフルエンザ薬はこれを阻害する。

そこで発症後48時間以内に投与すると、発熱期間を短縮させることで効果を発揮するという。

しかし、それ以上経過するとウイルスが増殖しきってしまい効き目がなくなる。

すなわち、この薬剤はウイルスを殺すわけではないのだ。

さてNA(ノイラミニダーゼ)もHA(ヘマグルチニン)と同様に、口腔内の細菌が出す酵素である。

だから、口腔内が不潔であるとインフルエンザに感染しやすいと考えられる。

インフルエンザ予防に口腔ケアが有効なのはこのためだ。

さて前回、療養高齢者に口腔ケアを行ったところインフルエンザの発症者が1/10となったと述べた。
(図2)

この点について、もう少し詳しく見てみよう。

まず高齢者を2群に分ける。

そして口腔ケア群は歯科衛生士による専門的口腔ケア、コントロール群は本人・介護者による従来の口腔ケアを行った。
(図3)

そしてインフルエンザの流行する冬季6か月間の発症者を追跡したのである。

感染の判定は、37.8℃以上の発熱と咳をする者に対しインフルエンザ迅速診断キットを利用した。

半年後、口腔ケア群はコントロール群に比べ唾液内生菌数が少なかった。
(図4)

細菌数が少ないとHA(ヘマグルチニン)やNA(ノイラミニダーゼ)の酵素活性にも影響しているはずである。

実際、口腔ケア群ではタンパク質分解酵素のトリプシンの酵素活性が低下していた。

しかし、コントロール群では変化がなかった。
(図5)

さらに、NA(ノイラミニダーゼ)もまた口腔ケア群では同様に低下したのだ。
(図6)

さて、口腔ケアによる効果は、唾液細菌数や酵素活性を低下させるばかりでない。

口腔粘膜や口腔周囲筋を刺激することで、口呼吸を防ぎ唾液分泌も促す作用を持つ。

これもインフルエンザ予防につながるはずだ。

現在、ウイルスの変異や耐性の問題などのため、ワクチンによる予防にも限界があると言われている。

その中で、療養高齢者に対する口腔ケアは大きな福音を持つといえる。

続く
参考 阿部修ら:健康な心と身体は口腔から ―高齢者呼吸器感染予防の口腔ケア―,日歯医学会誌:25.27-33,2006. 

前 岡山大学病院 小児歯科 講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
岡崎 好秀
http://leo.or.jp/Dr.okazaki/