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インフルエンザ考【その6】

2018年05月19日

突然だが、あなたが風邪やインフルエンザを自覚するのはいつだろう?

(図1)

  1:起床時  2:昼間  3:夕方~夜  4:夜間(睡眠時)

筆者も、起床直後に喉の痛みによって自覚する。

さて、ここに興味深い研究がある。

臼田篤伸先生は、風邪の初発について706名を対象として調査された。(注1)

その結果および考察:

1) 初期症状は、上気道が63.9%。
2) 起床時に気がついた者50.4%、昼間(日中)14.9%、夕方~夜31.3%、夜間(睡眠時)3.5%。
(図2)


3) 睡眠中にインフルエンザウイルスが増殖し、症状が進行した可能性が高い。
4) 原因として、嚥下の停止など上気道の活動の停滞との関与が疑われる。

というものである。

やはり、起床時に喉の痛みとして自覚することが多い。

では何故、ウイルスは睡眠時に増殖するのだろう?

これまでも述べてきたように、このウイルスは乾燥に強く湿気に弱い。

口呼吸があると、夜間は口腔内が乾燥しやすい。

しかも、粘膜は乾燥すると防衛力が低下する。

もう一つは、夜間には唾液の分泌が停止するためである。

昼間は、食事や会話など口を動かせるため唾液は多量に分泌される。

ある説によると、ヒトの嚥下回数は1日に約600回。

このうち食事時に200回。

残りの400回は、無意識に唾液を嚥下しているという。

胃に入ったウイルスは、胃酸によって殺菌される。

しかし、夜間は唾液分泌が停止するため嚥下反射が抑えられる。

そこで乾燥した粘膜からウイルスが侵入し増殖する。

(図3)

夜間は喉を動かさないので、風邪が進み炎症が起きても痛みを感じない。

そして起床とともに起こる嚥下により気がつくのだ。

そこで「予防的嚥下法」の登場である。

これは臼田篤伸先生が名付けたものだ。

夜間、枕元にお茶を置いて寝る。

目が覚めたら、少量のお茶でうがいをし、そのまま飲み込む。

そしてウイルスなどを胃へ送り込む。

これで乾燥を防ぐだけでなく、胃酸によりウイルスは死滅する。

ただ、多量に飲むとトイレが近くなるので注意が必要だ。

また、お茶に含まれるカテキンには、抗菌・抗ウイルス作用がある。

ちなみにカテキンは“前茶”・“番茶”・“玉露”・“ウーロン茶”に多い。

しかし一方で、お茶のカフェインは交感神経を刺激し眠りを妨げる。

そこでカフェイン量の少ない、“番茶”・“麦茶”“ほうじ茶”を利用する。

朝、喉に違和感があれば“ぬれマスク”と“予防的嚥下法”を試していただきたい。

注1:臼田篤伸:風邪症候群における咀嚼と嚥下の役割,日本プライマリ・ケア学会 Vol.21 No.2  1998年3月
参考:臼田篤伸:こんなに効くぞぬれマスク,農山漁村文化協会,1999年.

前 岡山大学病院 小児歯科 講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
岡崎 好秀
http://leo.or.jp/Dr.okazaki/