2006年07月18日
咀嚼・結腸反射?
唐突であるがクイズを1問。
ある婦人科病棟でのお話。
帝王切開や子宮の摘出手術では腰椎麻酔を行うことが多い。
ところが手術が終わっても麻酔のため、すぐに”ガス”がでない。
そこで、その病棟では、早く”ガス”ができるようにと”あること”を試みた。
さて”あること”とは、次の何だろう?
1. チューインガムを噛ませる
2. お腹をさする
3. 歯を磨く
正解は、1のチューインガムを噛ませるである。
この理由について説明しよう。
さて、盲腸の手術をした後、ガスが出るのは、麻酔から醒め内臓が動き出したからだ。
それでは、どうして内臓が動き出すと良いのだろう?
実は、内臓が動き出すこと。
それは、経口摂取が可能なことを意味する。
このことは、早期の退院につながるのだ。
そこで、この病棟では食事の時間に10分間チューインガムを噛んでもらった。
するとガスの排出時間は、半日ほど早くなった。
(図1)
ところで学生時代”胃・結腸反射”という言葉を習った。
胃に食物が入ると、その刺激で腸の蠕動運動が亢進し、トイレに行きたくなる。
しかし、噛むことがガスの排出を促進するならば、”咀嚼・結腸反射”と言うべきではなかろうか。
そう言えば、嚥下時の食塊の送り込みは、”舌の蠕動様運動”と表現されている。
舌の動きが引き金となって、胃や腸の蠕動運動につながるのかもしれない。
さて現在、”病気にならない生き方”(新谷弘実著)がベストセラーとなっている。
新谷弘実先生といえば消化器の内視鏡の第一人者。
アメリカ大統領を始め有名俳優ばかりでなく、日本においても元総理大臣や各界のそうそうたる著名人の主治医でもある。
この本に興味深いことが書かれていた。
要約すると、病院食では手術後、胃腸に負担をかけないように”お粥”を出し、いかにも体を思いやっているように思えるが、ろくに噛まずに飲み込むのでかえって消化が悪い。
むしろ、よく噛んだ普通食の方が、唾液の分泌を促すばかりでなく、消化酵素とも混じりあい、食物の分解が進むのでかえって消化が良くなる。
考えれば”当たり前の話”である。
口の専門家である我々は、消化器の入り口としての”口”について、もっと考える必要がありそうだ。