2016年08月01日
経口補水液は、コレラによる脱水を防ぐために開発された。
それではスポーツドリンクには、どのような経緯があったのだろう?
さてアメリカンフットボールは、激しいスポーツなので練習中には2.5L以上も汗をかく。
かつてスポーツ界では、厳しいトレーニングに耐えることで強い選手になると考えられていた。
そのため激しいスポーツであっても水分摂取は禁止され、脱水や熱中症で亡くなる事故が相次いだ。
しかし大量に真水だけを補給すると、細胞外液の水分が増え低ナトリウム血症に陥る。(注1)
このような経過から多量の汗をかいた場合は、水分やミネラルの補給が重要であることがわかってきた。
そこで1968年、最初のスポーツドリンクである“ゲタレード”がアメリカで開発された。
ちなみに、わが国では1980年にスポーツドリンクPが発売された。
以上のように経口補水液とスポーツドリンクは、まったく異なった経緯で開発されてきた。
さて、ここでWHOの経口補水液とスポーツドリンクPの組成を比べてみる。
まずスポーツドリンクは、経口補水液と比べ電解質は1/3~1/4と少ない。
一方、経口補水液はブドウ糖2%となっているが、スポーツドリンクPは砂糖など(砂糖+ブドウ糖・果糖液糖)が6%含まれている。(注2)
前にも述べたが、ブドウ糖1~2%とナトリウムを同時に摂取すると急速に吸収される。
でもエネルギー補給のためには、糖分濃度を高めに設定する方が有利と思われるかもしれない。
これは、回転ドアを例にするとよくわかる。
ブドウ糖が1~2%の時、ドアはスムーズに廻り細胞内に入ることができる。
しかし濃度が高ければ、一気にドアに殺到するのと同じ状態となる。
これでは回転ドアは廻らないのだ。
またスポーツドリンクPは、砂糖が含まれる。
ここで砂糖の吸収について少し考えてみる。
二糖類である砂糖は、そのままの形では腸管から吸収されない。
小腸の微絨毛に存在する二糖類分解酵素により、ブドウ糖と果糖に分解され吸収されるのだ。(注3)
しかし下痢をすれば、微絨毛が剥がれ分解酵素が減少するため吸収が困難となる。
また、糖濃度を低下させるためスポーツドリンクを3倍に薄めれば良いと言われる。
しかし、これは間違いだ。
これでは、ますますナトリウム濃度が低下し、何のために飲んでいるかわからない。
続く
注1:低ナトリウム血症(水中毒):ナトリウム濃度130mEq/L以下で全身倦怠・悪心・嘔吐
注2:ブドウ糖・果糖液糖については、別章で述べる。
注3:砂糖を分解する酵素はスクラーゼ、(別名)インベルターゼ、サッカラーゼ
前 岡山大学病院 小児歯科 講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
岡崎 好秀
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