MAIL MAGAZINE メールマガジン

スポーツドリンクと経口補水液【4】簡単な経口補水液の作り方

2016年08月16日

経口補水液は“飲む点滴”とも呼ばれ、水分・電解質・ブドウ糖が速やかに吸収されるよう調整されている。

OS-1(大塚製薬)、アクアライトORS(和光堂)、アクアソリタ(味の素)などが販売されており、小児の軽度~中等度の脱水に対して推奨されている。

ところで、これら経口補水液には大きな欠点がある。

それは普通の状態で、飲んでもまずいのだ。

一方、脱水などで体が欲していればおいしく感じる。

すなわち、おいしければ脱水の疑いがあると考える。

しかし、これでは一般消費者に対して売れない。

そこで、スポーツドリンクには6%砂糖(砂糖、果糖・ブドウ糖液糖)が加えられている。

すなわちスポーツドリンクは、スポーツ時の水分補給や軽い発汗に対する飲料であり、脱水時の補水には不十分と言える。

実際、スポーツドリンクの小腸での吸収率を調べた研究がある。

その結果、経口補水液の1/3程度、さらには蒸留水の約半分しか吸収されていなかった。

(図1) 
スライド1

このことからもスポーツドリンクは、あくまで清涼飲料水の一つと考えた方が無難であろう。

まだまだ暑い季節が続くので、激しい運動や大汗をかいた時は、まず水分と電解質が不可欠である。

昔から体調を崩すと“重湯に塩”・“重湯にうめぼし”の組み合わせで食べていた。

あれで失われた電解質を補給していたのである。

これこそ、昔からの生きた智恵だったのだ。

(図2)
スライド2

ちなみに、お茶や水(500ccのペットボトル)に、梅干し1個(中7g)を加えるとほぼ、OS-1のナトリウム量になると言う。

最後にかんたんな経口補水液の作り方を紹介しよう。

(図3) 注1
スライド3

 (1)ペットボトルに500mLの水を用意する。
 (2)食塩1.5gを入れる。
 (3)ブドウ糖10gを入れる。(5gのスティック2本)
 (4)レモンやグレープフルーツの絞り汁を少し入れるとおいしい。
   これらを混ぜると出来上がり。スポーツによる脱水や下痢には、これを与えれば良い。
 (5)下痢がひどい場合には、重曹1g(ふくらし粉)を加える。

 
 

参考文献
谷口英喜:経口補水療法ハンドブック、日本医療企画、2010.
根岸宏邦:子どもの食事、中公新書、2000.
金子一成:経口補水療法、小児科臨床、61(1)、13-23、2008.
豊田裕章:「スポーツドリンク」と「経口補水液」を正しく理解しよう!、小児歯科臨床、21(8)55-60、2016.
谷口英喜:「脱水症」と「経口補水液」のすべてがわかる本、日本医療企画、2014.
谷口英喜:経口補水療法、日生気誌、52(4)、151-164、2015.
金子一成:経口補水療法、小児科臨床、61(1)、13-23、2008.

注1:これらには、NaやKがある程度含まれているので、高血圧や糖尿病、腎疾患のある方は注意が必要。

 
*インターネットなどでは砂糖と書かれているが、むし歯のことを考えるとブドウ糖の方が良い。
 ブドウ糖のスティックはインターネットの通信販売で購入可能。

*市販の経口補液飲料の1/4~1/5の値段で作成可能。ブドウ糖5gスティック1本10~20円。(参考 OS-1 ペットボトル500mLで200円)

前 岡山大学病院 小児歯科 講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
岡崎 好秀
http://leo.or.jp/Dr.okazaki/