2015年11月16日
野生動物がケガをすると、しきりにその傷口を舐める。
これは、リゾチームなどの抗菌物質が含まれることを本能的に知っているのだろう。
しかし、傷口を舐める理由は他にもある。
ここで興味深い実験を紹介しよう。
まずネズミの背中を1cm四方に切る。
そして単独で飼った群と数匹を同時に飼った群の治癒面積を比較する。
2日後の深部創傷は、単独飼育では20%しか治癒していないのに対し、複数飼育では75%も治癒していた。
どうして、複数飼育では治癒が促進されるのか?
単独飼育では、ネズミは自ら背中を舐めることができない。
しかし複数飼育では、互いの傷口を舐め合えるのだ。
唾液に含まれる上皮成長促進因子(注1)は、治癒を促進させる効果があることがわかる。
次に、顎下腺・舌下腺を除去したネズミについても調べてみた。
すると、治癒の状態が悪かったのである。
すなわち、この作用は顎下腺・舌下腺唾液にあることがわかる。
それではどうして、上皮成長促進因子は顎下腺・舌下腺に多く、耳下腺には少ないのか?
ここで簡単に、唾液腺について復習しよう。
さて大唾液腺には耳下腺・顎下腺・舌下腺がある。
耳下腺は、最も大きくサラサラの漿液性唾液が分泌される。
顎下腺は耳下腺の半分の大きさであるが、分泌量は最も多く全唾液の70%を占める。
さらに、舌下腺は顎下腺の20%の大きさで、ネバネバした粘調度の高い唾液が分泌される。
顎下腺から分泌される唾液の性状は、耳下腺と舌下腺の中間系である。
こうしてみると上皮成長促進因子の存在は、唾液の性状と関係がありそうだ。
さて唾液は、ヌルヌルの粘液性とサラサラした漿液性に分けることができる。
しかし、どうして性状の異なった唾液が分泌されるのだろう?
つづく
注1:(EGF epitherial growth factor)
前 岡山大学病院 小児歯科 講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
岡崎 好秀
⇒ http://leo.or.jp/Dr.okazaki/