2014年12月25日
学校給食は、文部科学省で所要栄養量が決まっており、それに基づき献立が決められる。
しかし、この点にばかり目を奪われると、おいしい給食から遠ざかることとなる。
さてドイツ語の“食べる”という動詞は2つある。
一つは“フレッセン”(fressen)、もう一つは“エッセン”(essen)という。
“フレッセン”は、“動物が食べること”、すなわち“生命保持のために食べる”の意味である。
一方、“エッセン”は、“人間が食べること”、つまり“おいしく・楽しく食べる”の意味も含まれる。
“動物が食べること”と“人間が食べること”は違うのだ。
言い換えれば、“栄養学的観点”から捉えたのが“フレッセン”、そこに“心の要素”が加わると“エッセン”となる。
(図1)
ところで、かつての病院食も“フレッセン”としての意味合いが強かった。
少し前まで“病院食三悪”という言葉があった。
“冷たい” ・“夕食が早すぎる”・ “まずい”という点だ。
“配膳に時間がかかり、味噌汁などが冷めてしまう。”、“5時に夕食を配膳される”、しかも“まずい”という問題である。
入院患者に病院の評価を聞くと、“看護師が親切だったか”、“食事がおいしかったか”どうかが大きな関心事だ。
また退院した人で不平の第1位に上げるのが、食事をする気が起らなかったという。
治療食という名の下に「まずくて冷めた食事を1日3回、4時間おきに押しつけて、食べないと回復しないからね。」と患者さんに説教していた病院さえあったそうだ。
“治療食”は、口に入った栄養素やカロリーを把握することで初めて目的を達成するものである。
我々だって同様だ。
例えば、風邪を引いたとしよう。
食欲が湧かないうちは、風邪は治ったと感じない。
しかし、食物を一口食べて、“おいしいな”と思った瞬間に、この風邪は治ったと実感できる。
そんな思い、病気で入院中の、あるいは高齢の方々ほど強いに違いない。
だから、しっかり食べてもらうためにも“おいしそうで”・“食欲が湧く”・“楽しみになる”病院食が重要なのだ。
では病院食は、どのように改善されてきたのだろう。
続く
前 岡山大学病院 小児歯科 講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
岡崎 好秀
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