2014年09月11日
あなたは、小さなスプーンでヨーグルトを介助して与えられた。
前回のCさんの介助は、スプーンを口の手前で止めるので上下の口唇を伸ばさねば捕食できない。
獲物を取るために体を動かす、まさにこれが動物的な動きである。
このような与え方をすると、上唇が伸びて捕食が上手になる。
(図1)
同時に口唇を丸くするだろう。
当然、口輪筋などの顔面表情筋の発達を促す。
これはポカ~ンと口が開く口呼吸の予防にもなることだろう。
そればかりではない。
舌機能の発達を促し、低位舌の予防にもつながると考えている。
さらには乳歯の下顎後退位や過蓋咬合の予防になるかもしれぬ。
その理由はこうだ。
そもそも出生時、下顎は最後方位をとっている。
胎児は、窮屈な子宮内で屈曲位を余儀なくされるし口も使うこともない。
(図2)
さらに狭い産道を通過することで、頭蓋骨にも圧力がかかる。
必然的に下顎は後方位となる。
(図3)
下顎が後方位をとれば、舌も後方位をとることだろう。
そう考えれば新生児は、低位舌の状態にあると言えなくもない。
この状態で歯が萌出すれば過蓋咬合となる。
さて出生後、新生児は舌を前に出し上顎歯槽堤との間に乳首を
はさみ、しごくようにして吸啜する。
この動作により舌や顎は徐々に前方に位置する。
実際、出生時と比べ下顎乳前歯の萌出時には、下顎が4mm前進するという。
(図4)
さらに離乳食を捕食させる様に介助すれば、舌や下顎はますます前進する。
舌は、前に伸ばし正中を陥凹させる。
これが舌筋の発達を促し低位舌の予防にもなるだろう。
このように考えると、低位舌や口呼吸の問題は離乳食の与え方に
深く関係すると思われる。
かくも吸啜や捕食は、以後の上下の顎関係や口腔機能の発達に影響する。
離乳食を口に入れてあげる介助法は、小児にとっては“小さな親切大きなお節介”と言えるのである。
続く
前 岡山大学病院 小児歯科 講師
モンゴル健康科学大学(旧:モンゴル医科大学) 客員教授
歯のふしぎ博物館 館長(Web博物館)
岡崎 好秀
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