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阪神・淡路大震災時の乳幼児の生活習慣の変化

2011年06月20日

「子どもは大人の小型ではない」という有名な言葉がある。

これに続く言葉はご存知だろうか?

それは、「子どもは常に成長発達の途上にある。したがって環境の変化は、成長発達の途上にある子どもに最も影響を与えやすい。」である。

現在、被災地の子ども達は心身両面に大きな環境の変化を受けている。

これらの変化により、精神的にはPTSD、身体的には運動不足や不規則な食生活による肥満などの増加が考えられる。

また、歯科的には救援物資の菓子類の影響による齲蝕も重要な問題だ。

さてこの問題。

阪神・淡路大震災の時は、どうだったのか?

ある新聞社の調査では、被災地の約半分の小学校では肥満傾向の児童が増えたという。

運動不足や不規則な食生活のためであろう。

さて以前、神戸市における被災前後の1歳6か月児・3歳児の生活習慣について調べたことがある。

あれから16年経過し、筆者の手元にはわずかな資料しか残っていない。

しかし、もう一度当時の状況を整理し、被災地での齲蝕予防に活かす必要がある。

さて乳幼児における齲蝕ともっとも関係の深い生活習慣は、“間食の規則性”である。

この点について、当時の資料を震災前(1993年 平成5年)と震災後(1995年 平成7年)とにわけ比較してみた。

神戸市全体の1歳6ヶ月児の資料では、間食の規則摂取群が70.1から63.4ポイントへと減少し、不規則摂取群が6.7ポイント増加していた。

 

(図1)
震災前後の生活状況の比較(神戸市) おやつの与え方(1歳6ヶ月児)

 

3歳児においても規則摂取群は67.3から61.0ポイントへ減少していた。

 

(図2)
震災前後の生活状況の比較(神戸市) おやつの与え方(3歳児)

 

また神戸市でも灘区・中央区・長田区は建物の倒壊・火災など著しい被災を受けた地域と、比較的軽微な地域があった。

被害の大きかった灘区や中央区では、規則摂取群は約15ポイントも減少し、地域差が著明に見られた。

 

(図3)
震災前後の生活状況の比較(1歳6ヶ月児) おやつの与え方(規則摂取の割合)

 

さらに避難所や仮設住宅ではどうだろう。

自宅居住者と避難所・仮設住居者に住む1歳6ヶ月児は,間食の規則摂取がそれぞれ65.9%、45.7%であり、避難所・仮設住宅に住む幼児はダラダラ食いが多かった。

 

(図4)
震災前後の住居地と生活状況(神戸市) おやつの与え方(1歳6ヶ月児)

 

また、刷掃習慣においても自宅居住者で毎日磨くものは、避難所・仮設居住者より16.6ポイント多かった。

 

(図5)
震災前後の住居地と生活状況(神戸市) 刷掃習慣(1歳6ヶ月児)

 

このように阪神淡路大震災では、子ども達の生活習慣が大きく変化し、齲蝕リスクが高まっていた。

今回の被災地においても同様のことが起こっていると考えられる。

本資料を活用し、被災地での歯科保健に役立てていただければと願っている。

参考:阪神淡路大震災の前後における乳幼児の生活習慣の変化について、小児歯誌、34:534,1996.

 

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