2011年06月06日
忘れもしない1995年4月1日。
3歳の男児が初診で来た。
保護者は、「今朝、この子の口を見たら、前歯がむし歯でまったくなかったので驚いて来ました」と言われる。
しかし・・・である。
一緒に生活しているのだから、気がつかないはずはない。
不思議に思い「どうして今朝、気がついたのですか?」と聞いたら、思わぬ言葉が返ってきた。
「阪神・淡路大震災で家が全壊し避難所で過ごしてきたのですが、これ以上住めないと思い、先週こちらに引っ越してきました・・・。この子も全壊した家から3時間後に助け出されたのです。」
さらに「震災の直前に3歳児歯科健診を受けたのですが、むし歯はないと言われました。」
しかし口腔内には、C2・C3が14本も見られる。
どうして、こんな短期間に齲蝕ができたのだろう?
そこで、その理由を尋ねた。
「避難所に行ったら、環境の変化にとまどいこの子が泣き始めたのです。
そうすると、他の避難者から“うるさいから他の避難所に行け!泣かないようになったらいてもよい!”などと言われました。」
一瞬、“何と大人気ない”と思った。
しかし冷静になると、
“誰もが混乱し、気が立っている時期だから・・・”
とも思える。
「そこで泣かさないように、避難所にあったお菓子ばかりを与えていました。」
なるほど・・・。
そんな生活では無理もない。
短期間に齲蝕が多発した理由がよくわかる。
先月、岩手の被災地に行った時。
避難所の保健師が、
「お菓子ばかりなので、乳幼児を持つ保護者から何とかして欲しい!」
と言われたそうだ。
そこで、乳幼児を持つ家族だけ、別室にしているとのこと。
きっとこれから被災地では、乳幼児の齲蝕が増加することだろう。
救援物資のあり方、もう一度考えるべき時期に来ているように思う。
ついでに先ほどの3歳児。
なんと! 3年後に円形脱毛症が出始めた。
PTSDによるものである。
被災地の子ども達の“心のケア”今のうちに充分しておきたいものである。
注:PTSD(Post Traumatic Stress Disorder):心的外傷後のストレス障害
>>岡崎先生のホームペ-ジ
http://leo.or.jp/Dr.okazaki/