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口腔の機能と構音 その3 舌の機能と構音の発達

2011年02月21日

これまで構音は、単に声帯が振動するだけではなく、食べる運動により口腔周囲筋の発達が促されること、

また、直立二足歩行により咽頭など共鳴腔が、増大したことと深く関係すると述べてきた。

今回は、舌の運動機能と構音について考える。

さて、魚類の舌は動かないのが特徴と言える。

何故なら水中に住むため、体を動かすか水の流れにより捕食するので、舌を動かす必要がない。

しかし両性類に進化した時、すでにトンボなどの昆虫が陸上を支配していた。

そこで、昆虫を捕らえるために舌が動くようになったのである。

一方、哺乳類に進化すると、哺乳に必要なため口唇が動くようになる。

従って、系統発生の観点から考えると、舌機能は口唇より優位であり早期から運動機能が発達する。

そこで口腔の各機能の90%の通過年齢について調べてみると、

舌をまっすぐ前に出すのは2歳2カ月。

舌の出し入れの繰り返しは、2歳8カ月。

舌で下唇をなめるのは、2歳11カ月。

舌を左右に曲げるのは、3歳3カ月。

舌で上唇をなめるのは、3歳10カ月である。

ちなみに、両頬を膨らますのは3歳3カ月。

口唇をとがらせるのは3歳6カ月となる。

これらの各運動発達と平行し構音も発達する。

まず、パ・パ・パが、2歳2カ月。

タ・タ・タが、2歳3カ月。

カ・カ・カが、2歳8カ月。

そしてパ・タ・カの組み合わせは3歳5カ月。

さらにパ・タ・カの繰り返しは5歳でほぼ完成する。
(注:1)

また構音の完成時期は、p・m・t音が3歳前半、少し遅れてk音が3歳後半から4歳前半、s音が5歳前半、r音が5歳後半とされる。
(注:2)

次に構音の発達が、この順番となる理由について考えてみよう。

まずパやマ行を発するには、口唇閉鎖が必要となる。

これは嚥下機能と関係するので、早期に獲得される。

タ行は、舌尖を上顎歯列の歯茎に当てることで発せられる。

次に、カ行は奥舌を挙上させなければならない。

そしてサ行は、舌尖を前歯部に近接させ狭い空間より生じる摩擦音である。

この時、歯に接すると発せられないので、微妙な舌の調整能力が必要となる。

さらにラ行は、舌尖を硬口蓋前方に軽くあて、前にはじくようにする。

このように舌機能の発達は、構音の順番とも深く関係する。

注1:山根律子他、改訂版随意運動発達検査、1990
注2:中西他、構音検査とその結果に関する報告、1972

 

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