2011年03月07日
かつて、乳歯齲蝕の洪水と呼ばれた時期。
幼稚園での歯科検診はたいへんであった。
記入者に結果を伝えるためには、休む暇なしに口を動かし続けたものだ。
それに号泣する子も多かった。
歯科治療が嫌だったことも理由の一つだろう。
さて現在、乳歯齲蝕が激減し検診はずいぶん楽になった。
しかし、単に齲蝕の有無を見に行くだけでは時間がもったいない。
せっかく来たのだから、何かを得て帰ろうと思って健診の場に臨む。
齲蝕が減ったからこそ、診えるものがあるはずだ。
例えば、乳歯列が切端咬合でよく咬耗している口。
例外なく空隙があり、きっと将来きれいな歯列になることだろう。
一方、まったく咬耗がみられず被蓋が深い口。
こんな口に限って、乳歯なのに叢生がある。
齲蝕はないものの、これを“健康な口”として良いのかはなはだ疑問である。
前者は、生命力に溢れる口である。
将来にわたり健康な人生を送ることだろう。
しかし後者は、どうだろう。
どう考えても、両者の口の機能が同じだとは思えない。
何か気づかない大切なことが隠されているはずだ。
それをていねいに探すのも健診の意義である。
そこで健診時には、園の先生に積極性や食事の様子など園での生活について聞くようにしている。
そうすると、筆者が歯列を診て感じることと、園の先生が感じていることが一致するから面白い。
口の中には、小児の生活が溢れている。
なかでも歯列が狭く被蓋の深い小児は、“言葉が聞き取りにくい”や“幼児語が多い”などの指摘が多い。
そのため、“言葉の教室”が普通の子でいっぱいになるそうだ。
へえ~!
“言葉の教室”は、発達の遅れのある小児のためと思っていた。
さらに“そのような子に限って、舌の裏や横を見せてと言ってもできないのです。”と言われる。
そのような目を持ち、診療室でも診るようにしている。
そうすると、言語不明瞭を主訴に来院する小児が意外と多いことに気づく。
被蓋が深い小児にかぎって、乳臼歯がわずかに舌側に傾斜している。
これにより口腔内の容積が減少し、舌の可動域も狭くなる。
当然、構音にも影響するだろう。
さらに被蓋が深い小児は、下顎も後方に位置している。
これでは、咽頭腔が狭く十分共鳴させることはできない。
これが、機能性の構音障害が増加している理由ではないだろうか。
>>岡崎先生のホームペ-ジ
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