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口腔の機能と構音 その2 食物の軟食化と構音障害

2011年02月07日

言葉の障害は、2つを分けて考えるとわかりやすい。

“言語(ランゲージ)”と“話し言葉(スピーチ)”である。

前者は、重度の精神発達遅滞など知的な問題のために話すことができないもの。

後者は、器質性(口蓋裂)や麻痺性(脳血管障害)などの障害により話せないものである。

後者の構音障害は、形態や機能の問題であるから歯科医師として知るべき必要があろう。

さて構音障害には、病気や解剖学的に問題がないのに起こる機能性構音障害がある。

これは、近年増加傾向にあり軟食化による小児期の口腔機能の発達不全が原因の一つと考えられている。

例えば、“サカナ”の“s”音が“t”音となり“タカナ”になったり、“センセイ”が“テンテイ、“サンサイ”が“タンタイ”となるなど別の音に置き換わる“置換”。

また“r”音が抜け、“ブランコ”が“ブアンコ”、“プロペラ”が“プオペア”となる“省略”。

さらには、“ひずみ”がある。

これは、本来出されるべき音とは異なった音であり、明瞭とは言えない音を指す。

これらの幼児語は、口腔機能が発達するとともに減少する。

しかし、3歳児が上記のように発音しても普通であるが、小学校に入っても同じでは困る。

さて、食物の軟食化と小児の口腔機能について、最初に問題が提起されたのは昭和60年頃に遡る。

当時、TBSテレビの報道特集で“噛まない子・噛めない子”という番組が放映された。

保育所や幼稚園での現場では“軟らかいものばかり食べる”・“硬い食物を嫌がる”・“いつまでたっても飲み込まない”・“すぐに飲み込んでしまう”などの子どもが多いというものであった。

この番組以後、小児の噛むことにまつわる問題がクローズップされ、同時に多くの本が出版された。

 

(図1)
小児の噛むことにまつわる問題についての本

 

その一冊に、機能性構音障害について書かれている一節がある。(注1)

「発音の誤りの主な原因は、舌の発達のつまずきである。

正しい発音にとって、舌の巧みな運動は重要である。

舌尖を上にそりあげる。

奥舌を挙上する。

舌尖を上顎前歯に近づける。

舌を平らにしたり、スプーン状にする。

誤った発音をする子らは、舌の動きに弱さがある。

発音にとって決定的な役割を持つ舌の運動機能は、授乳と食事の発達を基に育つ。

(中略)舌の動きは、咀嚼力とともに育つ。

舌は食物を唾液と混ぜて練る。

口蓋に押しつけつぶす。

砕いたり・すりつぶして歯に運ぶ。

このことを通して、舌の運動機能は育つ。

従って、噛めば噛むほど、舌の機能は向上し正しい発音の力となっていくのである。」

当時から、食べ方の問題が口腔機能の発達不全を引き起こし、構音に影響する可能性について指摘されていたのである。

しかしその頃、食べ方がそこまで影響するとは思えなかった。

ところが・・・・・である。

(つづく)

 

注1:(鈴木秀悦:かまない子 かめない子 家庭栄養研究会1986)

お知らせ:

筆者が、年1回神戸で主催している勉強会があります。

以下ご案内です。

第28回公衆歯科衛生研究会(ネコの会)のお知らせ

テーマ「旭山動物園の動物は、なぜ元気か?」

日時:平成23年3月6日 日曜日 9時~17時

場所:兵庫県私学会館
〒650-0012 神戸市中央区北長狭通4丁目3-13

特別講演 「旭山動物園の動物は、なぜ元気か?」

元 旭山動物園 名誉園長 小菅正夫先生

北海道 旭川市の“旭山”といえば、今や世界NO.1の動物園である。

なにしろ“旭山動物園の動物たち”は元気が良い!生き生きしている。

何故そうなのか? そこには、さまざまな秘密が隠されている。

小菅先生の講演会では、是非、この点について語っていただこうと思っている。

旭山の動物たちを元気にした秘密の先には、現在の子ども達を元気にする秘密が隠されている。

そして、その先には、家庭が・・学校が・・地域が・・日本の社会が元気になるヒントが潜んでいるように思えてならない。

主な内容:

*グループワーク「誰も知らない動物ネタ(動物ネタで盛り上がろう!)」

1.人形劇「歯村動物園のゆかいな仲間たち」香川県 本田理恵先生

2.「“エッ!あの人!”ムチャクチャ忙しいのに、こんなところへ来ちゃっていいの?」

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3.「かみかみで分かってきたこと」
長野県 喬木第二小学校(カミカミセンサー開発者)養護教諭 安富和子先生

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