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指しゃぶり考 その3

2010年09月06日

指しゃぶりは、乳児期から幼児期の後半まで見られる。

その頻度は、生後2ヶ月頃から急増し4-5ヶ月で、ほぼ100%見られるが、以後減少し、3歳時では約20~30%となる。

このことは3ヶ月時と3才時の指しゃぶりの原因は、異なることを意味している。

筆者は、指しゃぶりの原因を年齢と要素から3つに分けて考えている。

1:乳児期(1才まで)       生理的な指しゃぶり
2:幼児期前半(1才から3才まで) 心理的な指しゃぶり
3:幼児期後半以後(4才以後)   癖としての指しゃぶり

指しゃぶりの頻度は、これらの3つの原因の集合体と考えられる。

 

(図1)
指しゃぶりの統計

 

別の見方をすれば、指しゃぶりを行う意味にも次の2つに分けられる。

A:「発達過程で必要な意味のある指しゃぶり」乳児期から幼児期前半
B:「意味のない指しゃぶり」幼児期後半以後にみられる習癖など・・

さらにAの「意味のある指しゃぶり」には、乳児期にみられるような“生理的な指しゃぶり”これは手や口の機能発達の過程にみられるもの。

そして母子関係や環境因子に基づく、子どもの“精神発達に関わりがあるもの”に分けることができる。

そこで発達上で必要な意味のある乳児期の指しゃぶりから考えることにする。

さて今、なんらかの理由でまったく手を口にもって行ったことのない小児がいたとする。

そして目の前に、おいしそうな食事がある。

この小児は、どうするだろうか?

欲しいと思っても、うまく口に運んで食べることができないだろうと思う。

何故なら手を口に持って行った経験がないからだ。

ここで私達の食事について考えてみよう。

まず目で食べ物を見て、手を伸ばして箸でつまみ、口へ持って行き咀嚼する。

これだけの動作の中で脳はさまざまな働きをする。

情報は、まず目から脳へ行き、脳から指令が出て手指を動かせ食物をつまむ。

そしてつまんだものを口へと運ぶ。

この時、脳の中では目、手、口などと相互に神経回路が形成され情報の受け渡しを行っている。

しかし・・・である。

出生時においては、脳と目、脳と手、脳と口と、それぞれが独立した回路であり、脳の中ではつながっていないのだ。

だから、このような経験がなければ、手で食物をつまんだとしても、手は口がどこにあるかわからないのである。

そう!

乳児期に指しゃぶりを行う中で、脳の中で目と手と口とを結ぶ回路(協調運動)が形成されるのだ。

これが発達に必要な意味のある指しゃぶりなのである。

 

(図2)
回路(協調運動)形成

 

>>岡崎先生のホームペ-ジ
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