2009年05月18日
“不特定多数の人に話をするときには、小学校3年生がわかるように話をすれば、誰もがわかる”という話し方の鉄則がある。
このことについて詳しく述べる。
小学校3年生といえば9歳であり、精神発達の分野では“9歳の壁”といわれる言葉がある。
この頃、“ものの見方”・“考え方”が“具体的概念”から“抽象的概念”へと移行する時期である。
具体的概念とは、これまでに見たり・聞いたりした経験など具体的にイメージが出来る世界。
例えば、金属の塊は、ものさしで長さを測り、はかりで重さを知ることができる。
では、密度はどうだろう?
密度は、重さを体積で除したもので直接測ることはできない。
これが抽象的概念の世界だ。
言い換えれば抽象的概念は、具体的にイメージできないものである。
例えば、“金属の飛行機が空を飛ぶ”ことは、不思議でならない。
しかし揚力は、目で見えないが確かに存在する。
これが抽象的概念の世界であり、科学を発展させてきた原動力と言える。
しかし、飛行機は飛ぶことさえできればよく、そのメカニズムは私達の生活とは直接関係ない。
専門家さえ理解できればよいことである。
この抽象的思考ができないため、算数でつまずく子どもがでる。
最初につまずくのが、小学校3年生の頃に習う分母の違う足し算である。
例えば,1/4のリンゴと1/4のリンゴを足せば1/2のリンゴになる。
これは頭にイメージできる。
それでは、1/3とリンゴと1/4のリンゴを足したらどうだろう?
このリンゴをイメージすることは難しい。
前者が具体的概念の世界。
後者が抽象的概念の世界である。
このように考えると、ステファンのカーブの“pH”を理解するには、抽象的な思考が必要であることがわかる。
何気ない一言の中にも、抽象的な概念もたくさんあるかもしれない。
だからこそ、不特定の人々を対象とした講演会では、小学校3年生がわかるように話をする必要があるのだ。
次回は、保健指導や健康教育にまつわる具体例について述べてみる。
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