2018年08月17日
上咽頭は、軟口蓋の裏の細菌や細かい砂塵が停滞しやすい部位である。
(図1)
この部分に炎症があっても、通常のうがいでは届かない。
しかし、”鼻うがい”は、上咽頭まで洗浄できるという。(図1)
“鼻うがい”は、世界三大伝統医学のアーユルヴェーでも行われていた。
遥か昔からの健康法が、現在見直されつつある。
この方法により、風邪、インフルエンザ、スギ花粉症などのアルルギーの予防、
さらには症状の改善が期待される。
また、鼻の通りが良くなると気持ちが晴れる。
さて、鼻うがいというと、”鼻がしみて痛む”と言われるかもしれぬ。
しかし、そうではない。
これは浸透圧の問題なので、体液に近い生理的食塩水で洗浄すれば解決する。
ヒトでの濃度は0.9%であるが、これは簡単に作ることができる。
その方法を紹介しょう。
まず自動販売機で、水のペットボトル(500mL)を1本。
そして100円ショップで、計量スプーンを購入する。
軽量スプーンは大中小の3種類で販売されていることが多い。
通常大が15mL、中が5mL、小が2.5mLと標準化されている。
(図2)
大雑把に考えれば、500mLの水に5gの塩を溶かすと1%の塩分濃度になる計算だ。
(図3)
これで鼻うがいをすれば、しみることはない。(注1)
ちなみに、これは歯牙の外傷による脱臼でも利用できる。
歯が脱臼した場合、再植までの時間が予後に大きく影響する。
30分以内に再植すれば成功率90%。
しかし30-90分で43%、90分以上だと7%に低下する。
同時に、歯根膜は乾燥に弱い。
しかし水道水に漬けると、浸透圧の影響でダメージを受ける。
そこで、牛乳に漬けたり、口に含むなどの方法もある。
さらに歯牙の保存液(ティースキーパー)を用意している学校もある。
(図4)
しかし、保存液がなければどうだろう。
そこで、生理的食塩水の登場だ。
砂粒が付着していれば、これで洗い流せばよい。
そして残った液に漬けて、歯科医院に駆けつける。
養護教諭には、生理的食塩水の作り方を伝えておけば喜ばれるだろう。
常に、保健室に備えて置くのも方法だ。
続く
注1:正確には、軽量カップの5mLは塩6gと換算され、1.2%の塩分濃度となる。
筆者は試してみたが、この濃度でも鼻がしみない。
前 岡山大学病院 小児歯科 講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
岡崎 好秀
⇒ http://leo.or.jp/Dr.okazaki/