2017年08月07日
元軍医から「食中毒の予防はよく噛むことである」と教えていただいた。
どうして、噛むことが予防になるのか?
そこで、ある実験を行った。
まずビーフジャーキーを用意する。
これは、乾燥した硬い肉なのでタンパク質の塊と言える。
だから胃から分泌されるタンパク質分解酵素であるペプシンで分解される。
そこで、塩酸でpH1に調整した水溶液にペプシンを滴下し人工胃液を作る。
そしてコントロールとして噛まないもの(A-1)と
筆者が5回噛んだビーフジャーキー(B-1)をビーカーに投入し37℃で3時間撹拌した。
こうして胃の消化実験を行った。
その後、1週間乾燥させた。
コントロールは、外側からしかペプシンが作用していない。(A-2)
しかし5回でも噛んだ場合は、硬い繊維が断裂しそこに唾液が入る。
これがペプシンと置換し、内側からも消化され、あきらかに小さくなった。(B-2)
ちなみに、10回噛むと痕跡程度になり写真を撮れなかった。
咀嚼とビーフジャーキーの消化との関係がよくわかる。
さて、ここで計算をしてみた。
今、1立方センチメートルのビーフジャーキーがあったとする。
そして1回噛むと1/2になるとする。
すると2回噛むと1/4になる。
3回噛むと1/8。
4回では1/16、5回では1/32となる。
単純に考えれば、5回噛めば32倍消化が進む。
10回では1024倍消化されることになる。
この調子で30回噛み続けると、どれだけになるだろう?
すると1立方センチメートルのビーフジャーキーは、
約10億分の一の大きさとなるのだ。※注1
続く
※注1 2の30乗=1,073,741,824
前 岡山大学病院 小児歯科 講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
岡崎 好秀
⇒ http://leo.or.jp/Dr.okazaki/