MAIL MAGAZINE メールマガジン

なるほど ザ保健指導&健康教育【12】噛むから始まる食中毒予防 その3

2017年08月21日

食中毒には、細菌性やウイルス性、その他寄生虫(アニサキス)、化学物質(農薬)、
さらには自然毒(フグ毒:テトロドトキシン、ジャガイモの芽:ソラニン)などさまざまな原因がある。

中でも多いのが、ウイルスや細菌によるものである。

(図1)

そこで細菌性の食中毒について述べる。

細菌性の食中毒は「感染型」と「毒素型」に分けられる。

“感染型”は、増殖した食中毒菌を摂取することで起こる。

例えば、病原性大腸菌やサルモネラ菌、それに腸炎ビブリオ菌などが原因菌である。

かつて学校給食にO-157が混入し、多数の被害者を出した事件があった。

筆者は、その学校の子ども達を定期的に診ていた。

保護者の話では
「入院中、ベットの上で寝ているより、オマルに座っている方が長かった」
とのことであった。

いかに激しい下痢をしていたかが想像できる。

ちなみに細菌が1回の分裂から次の分裂までを一世代と呼ぶ。

腸炎ビブリオ菌は、至適環境では極めて早く8分で一世代となる。

計算がややこしくなるので10分で一世代として計算してみた。

すると、
1時間後に64匹、
2時間後に4,096匹、
4時間後に約1678万匹、
10時間後には115垓(がい)2920京(けい)匹(1152920×10の16乗)となってしまう。

仮に、この菌が一匹10億分の1mgとすると…約1.15トンとなる計算だ。

これでは顎が外れてしまう。

もちろんこれは数字のマジックである。

ビブリオ菌がここまで増殖するためには、それ以上の有機物が必要だ。

次に”毒素型”は、菌が毒素を産生し、それを摂取することで発症する。

これには黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌などがある。

ボツリヌスは、青酸カリ・砒素・サリンなどの数千倍も強い”世界最強の毒”である。

日本でも熊本のカラシレンコンによる食中毒事件が有名である。

また1歳未満児に”ハチミツ”が厳禁なのもボツリヌス毒を考えてのことである。

一方、神経伝達物質のアセチルコリンの伝達を弱めることで筋肉を弛緩させ、
顔の皺を取るボトックス注射として美容整形の分野にも応用されている。

ここまで述べてきたように食中毒は、細菌やウイルスが食べ物を介して、
体内に侵入することによって発症する。

したがって、その予防には

1:傷んだものを食べない
2:熱を加えて食べる
3:手洗いをする

などが推奨されている。

(図2)

これは”口に入る前の予防”と言える。

しかし…である。

もし、食物に細菌やウイルスが混入していればどうだろう…。

食中毒には、”口に入った後の予防”もあるはずだ…。

続く

前 岡山大学病院 小児歯科 講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
岡崎 好秀
http://leo.or.jp/Dr.okazaki/